冬夜 ⑨

 どっちが男なのか、分からなくなってきました。でも、僕も泣くだけ泣いて気分が晴れました。

 冬夜と霞、お互い滅多に出会うことのない名前をしていますから、僕も僕なりの方法で先輩を探します。


 大企業の社長令嬢となれば、それだけでもかなり絞ることが出来そうです。そうですよね。会いたいなら、会いに行けばいい。

 単純で、難しくて、勇気のいることですけど、先輩と出会えるなら今以上に心が弾むことはないです。


 まだ社会を知らない非常識な子供の妄想と思われても、なんでもいいです。僕は先輩と出会いたい。今はこれ以上の願いはありません。

 改めて言わせて下さい。僕も先輩が大好きです。約束します、僕はずっと、先輩のことが大好きなままです。



 実は、母と妹がずっと僕を励ましてくれていました。いつか出会える、永遠の別れじゃない、と。

 僕は本当に、どうしようもない馬鹿です。周りに支えてくれる人がいて、自分を想ってくれる人がいるのに、1人で泣き喚いて、まるで悲劇のヒロインになったかのように振る舞って。


 こうして手紙を書くことだけが、唯一先輩を想うことが出来る手段なのに。大好きな人さえ、自分から遠ざけようとしていました。

 でも、それももう終わりです。先輩が僕を探してくれる、僕はそれまでに先輩に相応しい人になる。


 もう手紙が届かなくなっても、大丈夫です。


 先輩。僕を、見つけ出して下さい。ずっと、待ってます。

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