霞 ⑧
馬鹿だよ本当に。どれだけ泣いたんだ。届いた手紙はしわくちゃで、2枚目の便箋はスカスカだ。勿体ないぞ。
私も冬夜が好きだよ。本当はあんなことを書くつもりは無かったんだ。本心だったとはいえ、私も冬夜を苦しめたい訳じゃなかったんだ。
どうして私達はこんな形でしか出会えなかったんだろうな。神を恨むか、生まれた環境を恨むか。どちらにせよ、意味がないな。
でも冬夜。私達は、このサービスを利用していたからこそこうやって想いを通わせることが出来ているのだと、私は信じている。
相手を想って、心に届くようにと願いながら筆を取る。きっと私達が普通に出会い、自分の言葉で語り合ったらこうはならなかったよ。
私は自分を偽って、冬夜は家族を守るために戦って、本来なら出会うこともない者同士だったんだ。
でもそのどこに、これから出会えないという保証がある。冬夜は真っ直ぐに生きればいい。私が冬夜を探し出して、冬夜の手を引いてやる。
必ず出会いに行く。私がどんな家に産まれたのか忘れたのか? 私はこう見えても諦めが悪いんだ。
私は父の会社を継ぐ。それを条件に、大学を卒業するまでの間に日本全国、冬夜の名前で徹底的に探し回ってやるさ。
冬夜が嫌がっても、もう遅いぞ。首根っこ捕まえて、私の婚約者としてやがて私の会社となる企業に栄転させてやる。
だから不安に思うことなんて1つもないんだ。私もようやく覚悟が決まった。
大好きだ、冬夜。必ず会いに行く。約束してくれ、私が迎えに行くまで、待っていると。
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