霞 ⑦

 だからどうして、君はそんなに直球で手紙を書くんだ。私だってずっと関係を持っていたい。でもそれは叶わないことだと最初から分かっていたことだろう?

 私だって、私という人間のステータスを見ず、真っ向から向き合ってくれる君に感謝しているし、同じ時間を過ごしたいと思っている。


 でも私達はそういうシステムの元に出会った。規約を破っては私達が紡いできた時間が大義を失うんだ。




 私だって冬夜と触れ合いたいよ。声が聴きたい、髪に触れて、些細なことで笑い合いたいよ。

 どんな顔をしているのか、眼の形は、髪の色は。冬夜のことを考えない日なんて、もうないんだ。


 私を見てほしいよ。隣で笑って、妹君の話を聞かせてくれ。

 暑くなれば、2人でアイスティーでも飲みながら避暑地へ行けばいい。

 寒くなったら、手を握って欲しい。その度に、私に「優しい人」だと言って欲しい。


 私だってそんな未来を、冬夜と一緒に過ごす未来を夢見ているよ。


 本当に、冬夜は馬鹿だ。私をこんなに泣かせてどうしたいんだ。今この1秒、1行が私達にとってどれだけ大切なものか、分からない訳じゃないだろう。



 お願いだから、そんなことは書かないでくれ。冬夜から送られてくる手紙に涙の跡があるのに、私が辛くない訳ないだろう。


 最初からそうだ。冷酷な人を求めていると書いたのに、冬夜はずっと私に寄り添ってくれていた。ずるい、嘘ばっかりだ。

 これ以上、私を好きにさせないでくれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る