冬夜 ⑦

 ほとんど情報のない非営利団体ですが、今はとても感謝しています。こんな出会い、どれくらいの確率かは分かりませんが。



 お父様と話し合えて、良かったですね。不器用なんて枠を超えてると思ってしまいますが、先日の妹の言葉を思い返すと少し腑に落ちる部分もあります。

 もしかすると、お父様もずっと辛かったのかもしれませんね。それを無意識に感じ取っていたからこそ、先輩もお父様を悪く言うようなことは最初から手紙には書かなかった。


 きっと先輩だったらいずれお父様と話し合えていたと思います。だって先輩は、ずっと誰かのことを考えている優しい人でしたから。

 でも、そうですね。その一助になれたのなら、こんなに嬉しいことはないです。



 最初は軽い暇潰しの気持ちで始めたフリーレターが、ここまで僕の生活の中心になるとは思っていませんでした。

 先輩はもし、僕が手紙を書く度にこの時間が終わって欲しくないと、泣きながら書いていたと知ったら呆れるでしょうか。


 女々しいと思うでしょうか、軽蔑するでしょうか。

 ただどうしても、先輩とのこの関係を終わらせたくありません。



 母子家庭と知っている友人は、僕のバイトに気を遣って遊ぶことはありません。それでいいと思っていましたし、寂しさも感じていませんでした。


 でも先輩だけは、そんなことを気にせずに僕と関わろうとしてくれました。そんな時間が終わってしまうのが、どうしても嫌です。



 先輩とずっと、幸せなぬるま湯に浸かっていたいです。


                  冬夜

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