霞 ⑥
実際のところは分からないがね。ただ、少なくとも後ろ向きな気持ちでこのサービスを作ったわけじゃないだろうな。
そうでなければ、こんなにも心が温まる出会いは生まれなかったさ。
私の語り口が移ったか? それは結構なことだな。少年が少しでも私に影響を受けてくれたなら、これ以上に嬉しいことはないよ。
実はな、最近父と話したんだ。昔の、私が夢を語った時の話。あの時父が私の夢に大反対をした理由を今になって知ったよ。
父はただ、不器用なだけだったんだ。自分の父からされてきたようにしか子供に教えられなかっただけで、実際は危険な仕事はせずに普通の家庭を築いて幸せに生きて欲しいと思っていたそうなんだよ。
あれだけのことをされて、今さら信じられないと思うだろう? それが不思議なことに、手紙で思いを書いてもらったら、すっと私の胸の中に入ってきた。
あれは間違いなく父の本心だった。こうやって話し合えたのも、少年の甲斐性が私を救ってくれたからだ。
あのフリーレターを君が受け取ってくれていなかったら、きっと父との時間は訪れなかった。本当に、ありがとう。
色々と書きたいことがあったのだが、どうしてもこのことが伝えたくてな。
ありがとう、冬夜。
もうすぐで君は学校を卒業し、就職だな。君の門出の時期に、私達の関係も終わってしまうんだな。
こんなに辛いことが、他にあるかな。
霞
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