霞 ④
まず、謝罪をさせて欲しい。返事が遅れてしまったこと、不用意に少年のプライベートに押し入るようなことを聞いてしまった。すまない。
そうか、少年は就職するのか。私とは違うのだから、私とは異なる選択肢を選んでいて当然だな。私の配慮が足りなかった。
正直、どう手紙を書いていいか分からない。少年を傷付けてしまったのではないか、そんな思いばかり頭を過ってしまう。
気が付けば、最後に少年から手紙をもらって1ヶ月が経っていた。人は動揺するとここまで脆くなってしまうのだね。
少年は、将来は生物学者になりたかったのかな。その点は、私と気が合いそうだ。生物とは不可思議な進化を続けてきた異端の塊のようなものだからな。
歴史を紐解くのも、楽しいものだよ。
すまない。思うように筆が進まなくてな。本当にすまない。今少年の顔が見えないこと、声が聞けないこと、それがこんなにも不安を駆り立てるとは思っていなかった。
謝りたい。ただそれだけなんだ。私はこうやって友人を無くしてきたから、少年に嫌ってほしくないんだ。
私に必要以上に肩入れせず、等身大で、対等であろうとしてくれる少年を失いたくないんだ。どうか、先日の失礼を許してもらえないだろうか。
返事の遅れた私が言えることではないが、どんな形でも返事を待っている。
霞
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