霞 ②
返事が来ると思っていなくて、私宛ての郵便が届いた時は本当に驚いたよ。少年は随分と暇しているとみた。
ただ、ありがとう。君の言葉に少しだけ救われた気がしたよ。
しかしね、少年の言葉は直球過ぎるんだよ。読んでいる私がむず痒くなる。私は言葉を選んで手紙にしたというのに、君ときたらそんなことをお構いなしに。
私だって手紙が届いた時、形容し難い嬉しさが胸を駆け巡ったさ。少年の真っ直ぐで温かい言葉が私に向けて書かれていると思えば、嫌でも口元が緩むさ。
少年は相当な女たらしか、天性のすけこましだな。
ほら、気が付けば愚痴なんかより少年の話をしたがっている私が顔を出している。どうしてくれるんだい?
愚痴を建前に、私を知らず、私を受け入れてくれる誰かとの繋がりを求めていた私に、これ以上何をさせるつもりなのかな。
差し支えなければ少年の話がしたい。趣味でも、今日あったことでも、何でもいい。少年の話を聞かせて欲しい。
そうだ、好きな花と色を教えてくれるかい。次私が送る手紙には希望の花と色で封をしよう。シーリングスタンプというやつさ。
便箋2枚というのはあまりに少ないな。いざ書き始めるとあっという間に埋まってしまう。
本当に嫌になるな。顔も知らない、1通手紙を交わした少年から早く便りが欲しいと思ってしまうよ。
少年の言う通り、手紙とは想いが息をするように零れ落ちるな。
霞
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