小生【しょうせい】
自分自身を表す代名詞は多い。
公的表現である「私」の他に、数ある私的表現の中でもよく耳にするのは、「僕」「俺」「自分」あたりだろうか。
子供の頃、自分のことを「うち」と表現していた時期もあった。
大阪に住んでいた頃なので、地域的なものだったかもしれない。
私が社会人になって数年たった頃、初めて「小生」を使う人に会った。
中途入社の彼は、何も考えず、当たり前にそう表現していたのだろうと思う。
ただ平均年齢が若い会社なので、その言葉に違和感を覚えたメンバーもいたのではと邪推していた。
そんなある日、会社の郵便受けを覗くと顧客からの手紙が届いていた。
宛名には「小生様」とあった。
すごく驚いた。もしも周りに同僚がいたら、すぐに見せに行っていたと思う。
恐らく顧客とのメールでも「小生」を使っていたのだろうし、彼は決して何も間違っていない。
それでも、ああ、この手紙を出した人は「小生という苗字の人」だと思っていたのだなと考えると、可笑しくて仕方がなかった。「小生」は「私」と同義なのだから、その人にとって、彼は「田中は〇〇だと思います」などと表現する人になっているはずだ。
ビジネスシーンには、独特の表現や言い回し、暗黙の了解が多く存在する。
最初からそれら全てをインプットしている人間はいないし、知らないことは、覚えればいい。
それでも手紙を出した誰かは、「小生」に違和感を覚えなかったのだろうかと不思議でならない。
彼はメールの署名に、いつもフルネームを記載しているのだから。
鴨の羽
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます