第174話 アタシノセイ 〜五十嵐編
――パパパパパーン!
「危ない!」
「え!? 集塵くん? きゃっ!」
気がつくと集塵くんは、まるで放り投げられた人形のように孤を描き宙に舞い、身体を地面に叩きつけられ……それは一瞬のはずなのにスローモーションの映像でも見ているようだった……。
「何が……起きたの……」
あたしは、地面に倒れて身動き一つしない集塵くんと、その前に止まっているトラックを目にして、ようやく状況を理解することが出来た。
「嘘……」
集塵くんが動かない……彼のところに行かないと……。
鼓動が速まる、早く近付きたいのに錆びついたブリキ人形みたい。思うように動かない……やっとのことで彼のところにたどり着いた。
彼の横で地面に膝をつく。
痛いっ! 突き飛ばされた時に足も痛めたのかもしれない……歩いた時とは別の痛みが膝に……でも今はこんな痛みなんて……集塵くん!
すごい血の量……このままじゃ……しゅ……じ……。
「集塵くんっ! 集塵くんっ! やだーーっ!」
そうだ……きゅ、救急車……スマホは……ポケットに入れたスマホが無い……きっと転んだ時に落としたんだ……誰か……。
「誰かー! 誰か救急車をっ!」
――おい! 男性がトラックに
「ゴホッ」
集塵くんの口から血が……どうして、どうしてこんなことに……あたしがデートに誘ったから? 最後に思い出を作りたいなんて考えたから? 涙を誤魔化そうとして自販機になんて向かわなければ……ごめんなさい……ごめんなさい、集塵くん……ごめんなさい。
だから……。
やだよ……集塵くん……死なないで……。
「集塵くん、死んじゃ嫌だよ」
早くっ! 早く! 救急車を呼んで! 誰でもいいから集塵くんを助けて……神様……。
――パチン! パチン!
!? 静電気のような音が……。
「きゃっ! なにっ! 丸い光がっ!」
――パチンッ! バシュッ!
目の前に突然、丸い光が……え? 人の姿に変わって……あの形……ぎん……ぱつ……ちゃん?
「集塵ーーーーっ!」
「銀髪ちゃん!」
「集塵! しっかりしろ! 大丈夫か!」
どうして銀髪ちゃんが……あっ!
「銀髪ちゃん! 駄目! 動かしちゃ! 今、救急車がくるから!」
「離せ! この星の技術じゃ無理だ! このままじゃ集塵は死ぬ!」
「でもっ!」
こんな必死な銀髪ちゃんは初めて……この星じゃ無理ってどういうこと?
「集塵! 戻るぞ! 一瞬だ!」
「銀髪ちゃん! あ、あたしも集塵くんと一緒に!」
「女! お前は後からこいっ! お前までは連れていけない!」
――チチチッ
――パチンッ! パチンッ! バシュ!
「消え……た」
銀髪ちゃんが集塵くんに覆いかぶさるように抱きしめると、その瞬間、光を発してその場から消えてしまった。
何が起きたの……どうして突然銀髪ちゃんが……そういえば以前にも突然消えて……あれは何なの?
でも……今はそんなこと、どうでもいいよね……集塵くん……どうか集塵くんが無事でいられますように……お願い……神様……銀髪ちゃん……。
――ピーポー、ピーポー
救急車が……きっと誰かが呼んでくれたのね……いつのまにか人だかりが出来てる……。
「事故に
「迷惑……かけちゃった……」
「はい? 大丈夫ですか? お怪我は?」
「大丈夫です……」
――本当、迷惑かけちゃった……こんなあたし……もう集塵くんの側になんていられないよね……ね……エヘヘ……だよ……ね……エヘヘ……。
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