第160話 きっと大丈夫
目の前に激しく燃え上がる炎は、うさぎのらびっとを覆い尽くし、看板の文字は
気がつくと、俺たち二人の他にも野次馬が集まってヒソヒソとした話し声が耳に入ってくる。
「集塵くん……中の人は大丈夫かな……」
「この時間だし、お客さんは殆ど居なかったんじゃないかな? 従業員といっても、この店、無人コンビニだし……」
「そうだよね。大丈夫だよね」
「ああ、きっと大丈夫だよ」
コミアさんも、この時間であれば中で働いていることは無いはずだ……それにしても、どうして突然、火災なんて起きたんだ……。
「危ないですから下がってください!」
消防士が俺たち野次馬に対して注意の声をあげる。
炎の激しさに圧倒されて、ただただ、それを見つめるだけしか出来ない俺は、この場にいても邪魔なだけだろう……店のことは気にはなるけど、ずっとここに居るわけにもいかないよな……。
「五十嵐さん……戻ろう」
「う、うん。そうよね……」
俺たちは燃え盛る炎を背に、来た道を戻ることにした。
「お弁当買えなくなっちゃったね……」
「うん……」
そうだ……あの様子だと、うさぎのらびっとは全焼……建て直すにしても、そんなすぐには準備できないだろうし、普通に考えたら暫くは営業出来ない……それどころか、これを気に、うさぎのらびっとは無くなってしまうこともあり得る。
このままじゃ、銀髪に栄養を届けることが出来ない……どうしたら……。
「カルビ炭火焼弁当、もう買えなくなっちゃうのかな……」
「うん……俺たちは、まだしも銀髪は大好物だったしな……何とかしたいところだけど……」
「あ、あのさ、集塵くん。あたしが作ろうか?」
「え!? 五十嵐さんが?」
「うん……同じようには作れないかもしれないけど、似たような物なら出来るかもしれないし、少なくとも今夜は……あ……」
「ん? 今夜は、どうしたの?」
「ごめん……やっぱり無理かも……」
「いや、いいけどさ、どうかした?」
「材料が……ないかも……エヘヘ♡」
「なるほど……」
そりゃそうか……そんな都合よく冷蔵庫にカルビ肉が入っているわけもないよな……ましてや五十嵐さんは一人暮らしだし、そんなに大量の食材なんて確保はしていないだろう。
「仕方ないよ。とりあえず戻ってから考えることにしようぜ」
「そうね」
カルビ弁当の話をしていると、俺たちはいつのまにか、マンション前まで戻ってきていた。
「そういえば、コンビニに向かっている時、俺に何か話そうとしていなかった?」
「え? あ、えーと、う、うん……大丈夫。また今度でいいよ」
「そうなの? 何か急ぎの用事とか?」
「本当、大丈夫だから……また今度話すね」
「そっか……」
気にはなるけど、仕方ない……無理強いするのも良くないよな……。
「あなたたち!」
「「え?」」
――誰だ?
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