第158話 在庫はあるのかにゃ?

 冷蔵庫の中からカルビ炭火焼弁当を取り出した俺は、レンジでそれを温める。銀髪はお腹が空き出したせいか、そわそわしながらこちらを見つめたままだ。


「あと二分くらいで温まるからな」


「おう! 早く食べたいぞ!」


 それにしても、この切り替わりは……今までの銀髪に戻っただけだから、さっきまでの銀髪よりは受け入れやすいはずだけど、差が激しすぎて気持ちが追いつかない。


 このタイツ、一体どういった仕組みになっているんだ? 


 ――チンッ


「お! 出来たぞ銀髪。今、そっち持っていくからな」


 少し温めすぎてしまったせいか容器が若干変形している……火傷をしないよう丁寧に蓋を開けたそれを、テーブルの上に置いた。


「ほれ、食えよ」


「まるでペットに餌をあげるみたいな言い方にゃ……」


「そうかぁ?」


「おおお! いただきまーす!」


 銀髪は食事の挨拶を済ますと勢いよく弁当を頬張り出した。まさに俺の知る姿だ。


「うまいか?」


「おう! うまいぞ! 何だか久しぶりだ!」


 久しぶり? いや、少し前に食べたよな……覚えてないのか? でも、さっきまでの銀髪は過去の記憶をしっかりと覚えていたし……それに俺のことだって覚えている。うーん、益々わからない。


 お? 弁当は、もう残り数口というところか……食べるのはやっ!


 しかし、困ったな……この様子だと話の続きは出来なそうだ。


 仕方がない。一旦、中断するか……多少なりとも情報を得ることは出来たしな。


「集塵。カルビ炭火焼弁当の在庫はあるのかにゃ?」


「え? いや、今ので最後だけど。バタバタしていたし買いだめはしてないぜ? さっきのだって五十嵐さんたちが買ってきてくれたものだし」


「なら買いに行ったほうがいいかもにゃ! きっとまた必要になるにゃ!」


「そうか……そうだよな」


 たしかに、栄養を常に送らないといけないわけだから、ありませんでしたは通用しないよな。


「よし! それじゃあ今から買ってくる。銀髪のことお願い出来るか?」


「まかせるにゃ!」


「さんきゅ! あっ……ねこ……」


「なんにゃ?」


「……いや……なんでもない……留守番頼んだぞ」


「いってらっしゃいにゃ!」


 銀髪のことを、ねこから聞こうと思ったが、今は弁当の方が優先だよな……それにかんしては後日でいいだろう。


 ポケットの中のスマホを確認した俺は部屋を後にした。


 


 外はもう真っ暗で夜空には星が確認できる。感動するほどの数は確認できないが、俺はこんな夜空が好きだ。


「集塵くん?」


「ん?」


 ――マンションの入り口を出たところで、突然背後から俺の名を呼ぶ声が耳に入る。振り返ると、そこにはジャージ姿の五十嵐さんが立っていた。


































 






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