第157話 雰囲気
今日まで考えもしなかった……銀髪のいた世界から来た人物が、他にもこの町に来ていたなんて……そりゃあ、少しは変だなって思ったこともあった。
猫が言葉を話したり、手から漫画みたく何かを出す奴や、着ぐるみの不審人物だって、冷静に考えたら違和感しかないもんな……そして一番考えなくてはいけなかったのは銀髪の存在だ。
あの日……銀髪がコインランドリーの乾燥機の中に突然現れて……最初は、近所の悪ガキが悪戯でもしているのかと思っていたんだ。
あれから何の疑問も持たずに一緒に生活をしてきてしまったけれど……銀髪は何故この町に……。
「銀髪……お前……なぜ、あの日コインランドリーの乾燥機の中にいたんだ? この町に来た理由はあるのか?」
「……この星に……町に来た理由はあるよ……でも、転送場所には大きなズレが起きてしまったみたいね」
「転送場所がズレたって……もともとは何処に着く予定だったんだ?」
「うさぎのらびっと……」
あのコンビニか……そういえば、あの店は銀髪と出会った日くらいに、いつのまにか外観は完成していて、それから割と早くにオープンしていたっけ……。
「なんで、あのコンビニなんだ?」
「あそこはね……あそこは……えーと……なんだっけ?」
ん? なんだ? 急に銀髪の雰囲気が……。
「銀髪?」
「お腹すいたぞ! 集塵っ! 弁当よこせっ!」
「はぁ?」
「お腹すいた! お腹すいか! お腹すいたっ!」
「おいおい! 急にどうしたんだ! しかも、さりげなくデザートの果物まで要求してんじゃねーよ!」
「うーーーー!」
いったい、何だって言うんだ……突然、いつもの銀髪に……なんで?
「恐らくタイツがお腹を空かしているにゃ……」
俺の背後から、突然ねこが声をかけてきた……振り向くとタオルを胸元に巻いて立っている。どうやら風呂から上がったようだ。
「タイツが腹を空かして……」
そうか……そういえばモウツαの話では、銀髪の身につけているタイツは銀髪を栄養としているんだった……でも、だからって思考にまで影響が出るものなのか?
「そうにゃ! 何か食べ物を与えるにゃ! こんなこともあるかと思って、わたっちは夕飯のカルビ炭火焼弁当を辞退したのにゃ!」
「じゃあ、夕飯食べてきたっていう話は嘘だったのか? 大丈夫か? 本当は腹減っているんじゃ……」
「安心するにゃ……夕飯を食べてきたのは本当にゃ」
「それじゃあ、弁当断ったのは銀髪と関係ないじゃねーか……」
「い、今は、そんなことを議論している場合じゃないにゃ! 集塵! 早く冷蔵庫に向かうにゃ!」
「わ、わかってるよ!」
――俺はカルビ炭火焼弁当を取りに冷蔵庫へと急いだ。
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