第153話 頼んだにゃ
色々あったけど、皆んなでテーブルを囲んでの食事は無事終わり、俺はカルビ炭火焼弁当の空箱を片付けていた。
一つ気になったのは銀髪のだけが数口分だけ、残されていたことだ。普段なら残すどころか、おかわりがあっても不思議じゃないのに……やはり体調が良くないのだろうか。
とはいえ見た感じ顔色が悪いということも無さそうだし……うーん。
「銀髪、お腹いっぱいになったか?」
テーブルの端に、ちょこんと座る銀髪に俺は声をかけた……何処か自分の中で安心をしたいからという思いからだ。
もっとも此処で、はい、元気ですと言われたところで、何の解決にもならないんだけどな……あまり好ましい答えではないけど、調子悪いですの方が、分かりやすくて良いのかもしれない。
「えーと、大丈夫。もうお腹いっぱいかな?」
「そうか……それならいいけど……」
なんだろう……何か違和感を感じるんだよな……銀髪であって、銀髪じゃないような……。
「集塵くん。食事も終えたし、そろそろ肩ちゃんと一緒に部屋に戻ろうかな」
「そうか、まぁ、結構いい時間だもんな。今日は色々とありがとう。助かったよ」
「どういたしまして♡」
「それじゃあ集塵さん、私も嵐ちゃんと戻ります。おやすみなさい!」
「ああ、肩ちゃんもありがとうな。おやすみ」
五十姉妹は、シンクロ率を高めたバイバイを俺に向かってすると、部屋を出ていった。
「おい! 集塵! オレサマも、ちっと外に出てくるからよー。窓開けてくれねーか? 今夜は戻らねーぜ」
「え? 今から出るのか? 鳥なのに?」
「チッ! だからオレサマは、その辺の軟弱な鳥じゃねーっつてんだろ! いいから開けてくれ」
「わ、わかった」
窓のカーテンを開き、ガラス戸を引くと、ヨドラ文鳥は羽をばたつかせながら勢いよく飛び出し、暗闇へと消えていった。
部屋には俺と銀髪、そして、ねこだけが残される。
「えーと……二人ともどうする? 風呂でも入ってくるか?」
「集塵……ちょっといい?」
「ん? なんだよ銀髪」
「昼間からのことなんだけど……少し話せたらなって思うの」
そうだよな……結局モウツαの話は途中で止めてしまったし……幸い、皆んなもいない……話すなら今がいいのかもしれない。
「話ってなんにゃ?」
いや……一名いたわ……。
「いや、なんていうか、たいした話じゃないんだよ。気にしないでくれ。ねこ、先に風呂でも入ってこないか?」
とりあえず銀髪と二人でゆっくり話したいし、ねこには風呂にでも行ってもらえると助かるんだが……。
「わかったにゃ……二人で何か大切な話があるんなら仕方ないにゃ」
「あ……なんか気を使わせて悪いな」
「いいにゃ……じゃあ、あとはホリエ姫のことは頼んだにゃ」
「え!?」
――どういうことだ……ねこがなんで……そのことを……。
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