第124話 俺の選択は間違えてはいない

 モウツαたちが俺の記憶を消す為に、薬を飲ませた理由が下らなすぎて、何だか呆れてきてしまった……。


 ただ、銀髪を危険な目に合わせたのだけは許せない……それを考えたら怒りで、まともに話せる自信はないし、出来れば関わり合いたくはないというのが本音だ。


 だけど……銀髪を救ってくれたのは、こいつら……モウツαなんだよな。


 納得は出来ない……できないけれど、銀髪が倒れた原因は詳しく知っておく必要があるような気もするし、やはりここは冷静になって話をしていくべき……か……。


「集塵! こいつらと、まだ関わる気なの? 変なものを飲まされて……そんなことをされて許せるっていうの?」


 銀髪……また、俺の心を読んだのか……。


「ちょっとまて銀髪。そういうわけじゃない」


「そういうわけじゃないなら、もう此処から離れようよ!」


「!?」


 銀髪の目から涙が……そんなに俺のことを心配してくれているのか……自分だって危険な目にあっただろうに……しかし、このタイミングを逃したら恐らく此処へはもう……。


「銀髪、聞いてくれ……」


「……やだ」


「なっ!?」


「集塵、わたしと部屋に帰ろうよ。此処に居ては駄目なんだよ! わたしには分かるんだ!」


 もしかして、モウツαたちの心を読んで……。


 銀髪は俺の目をじっと見つめると、静かにコクンと頷いた。


「そうか……でも銀髪、それでも俺は……」


 そうだ……銀髪が何を知ったのかは俺には分からない。けれど今帰ってっしまったら後悔をしてしまいそうだ。


「悪いな銀髪、お前は先に部屋へ戻っていてくれ」


「集塵の……」


「ん?」


「集塵のばかーーーーっ!」


「なっ!」


 銀髪は俺を怒鳴りつけると、玄関の外へと走り出し、その場から消えてしまった。


「銀髪……」


 これで良かったんだよな……これからのことを考えるなら、ここで情報を得た方がいい気がするんだ……俺の選択は間違えてはいない。


「集塵くん。彼女をすぐに追いかけることを、お薦めするよ」


「モウツα……なんだよ突然」


「察するに彼女は、この部屋に来るまでにスーツの力を多用していないかい? しかも五階から落とされた時にはその力はかなり働いたと思うよ?」


「強制的に使うように仕向けた奴が、よく言うぜ」


「うーん……そうだったのかもしれませんね?」


「なんで頭に疑問符がついたような言い方なんだよ……明らかに原因はお前じゃねーか」


「そんなことより、僕と悠長に話をしている場合じゃないと思うんだけどね」


「どういう意味だ……」


「彼女……このままでは危険ですよ?」


 ハッ!? まさか……あの時のように銀髪が倒れて……。


「顔色が悪くなってきたね……もう分かったよね? 急がないと、ほら」


 むかつく言い方しやがって! 部屋には五十嵐さんやヨドラ文鳥もいるから、何かあってもきっと彼女たちが知らせてくれるだろう。


 だが、倒れた銀髪の治療までは無理だ……仕方がない……。


「いいか! 戻ってきたら話は聞かせてもらうぞ!」


「そうだね。いずれにしても此処に戻って来ることになると思うし、僕は最悪な結果にならないよう準備をして待っているよ」


「くそっ!」


「アハハハハハッ!」


 ――部屋に響いたモウツαの笑い声を背に、俺は玄関を飛び出した……。

















 







 







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