第115話 部屋の秘密
モウツαの部屋に入ると、そこは俺が知るマンションの部屋の広さではなかった。
まるで隣の部屋の壁をぶち抜いて一つの部屋にしたような……いや……これ、本当に部屋の壁を破壊してつなげているんだ! うららぎが部屋にいるのも納得できる……。
部屋の中は大きな事務机を含め色々な大きさの机があちこちに配置されていて、その上には見慣れた生活家電などが置かれている。
恐らく肩ちゃんのヘッドホンと同じように見た目は普通だけど変な機能が搭載されているのだろう。
「驚いたかい? 君の部屋より広く感じるでしょ」
「部屋の壁を壊したのか?」
「うん。研究をするのに部屋の広さが足りなくてね」
いや……引っ越せよ……というか最初から広いとこに住めばいいのに、何故このマンションを選んだんだ。
「うららぎさんは何も言わなかったのか?」
「彼女は即OKをくれたよ。寝泊まりさえ出来れば何も問題ないらしい」
「彼女? 俺は、うららぎさんの話をしているんだけど?」
「うん。うららぎさんのことだよ?」
「え?」
「う、うららぎさんって、女性だったの!?」
「そうですよ? 知らなかったの?」
「いや……気がつく要素が何処にあるんだよ……声だって、男じゃないか。普通に分からないだろ……」
「彼女は僕の開発したスーパーアニマルスーツの実験の手伝いをしてもらっているんだ。声に関してはボイスチェンジ機能を搭載しているからね。そのせいだと思うよ」
まさか、うららぎが女性だったなんて……てっきりいい歳した中年のおっさんかと思い込んでいたぜ……最もあんな着ぐるみをきて街中を歩き回っているくらいだから、まともな奴だとは思えないけどな……。
「お客様様ーー何か飲むーーーー?」
「いや、いいです……」
……いきなり声をかけるなよ。心臓に悪い。
「えーと、僕の部屋を訪ねてきたのは倒れた彼女の件だったよね? あれから元気にしてるかな?」
「ああ……少し食欲が倍増した気はするけど、以前と変わらず元気だよ。」
「そうですか……それなら良かった」
うららぎのことで頭が混乱して銀髪の話をする気が失せてきてしまった……とはいえ、折角きたし倒れた理由も気になるからなぁ……。
「お客様ーーーージュースを持ってきましたよーー!」
ん? なんでジュース持ってきたんだ? さっき断ったはず……しかし折角の好意を無駄にするのも何だよなぁ……。
見たところ普通に美味しそうなオレンジ色をしたジュースが縦長の綺麗なグラスに入っている。オレンジジュースかな?
「それじゃあ、折角だし貰おうかな……」
「机の上に置いておきますねーー! 冷めないうちに飲んでねーー!」
「え? これホットなの? 普通にグラスに入ってるから冷たいのかと思ったぜ……てか、熱割れしないのかよ……怖いなぁ……」
「大丈夫だよ。そのグラスは耐熱仕様だから」
――グラスは問題ないということは理解した……が、このオレンジ色をしたホットの飲み物ってなに? 俺はこの得体の知れない飲み物の入ったグラスを手に取り恐る恐る口をつけた……。
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