第114話 振り返った先には……!
モウツαの部屋を立ち去ろうとした俺を呼び止めたのは、うららぎだ。どうやら俺は部屋を間違えてしまったらしい……。
「お客様ーーいったい何の用なのですかーー!」
「すまん……部屋を間違えた」
「間違え……ということは先程の美味しいものを頂けるという話は……嘘だったんですねーー!」
「まさかお前、それが気になって出てきたのかよ……」
「う、五月蝿いですねーー! ところで何方の部屋と間違えたのですかーー!」
「何でお前に話さないといけないんだ?」
「なら……なぜ間違えたんですかーー? 怪しいですーー! そう言って勧誘してるんじゃないですかーー?」
「ちげーよ! たくっ……モウツαという人の部屋を訪ねてきたんだよ。間違えて悪かったな」
「モウツα……お客様……モウツα宅で間違いないですかーー?」
「そう言ってるだろ! もういいよ、早く部屋に戻れよな」
「モウツα宅なら間違えてませんよーー? 大正解でーーす!」
ピンクのうさぎは何処からかお子様ランチの上に飾られているような小さな旗を取り出して左右にそれを振り出した。
「ん? 言っている意味が良くわからないんだが……そこはお前の部屋だろ?」
「ノンノン! ここはーーモウツαくんの部屋でーーす!」
「はぁ?」
……ということは何か? うららぎはモウツαの部屋に、たまたま遊びにきていたとか? 紛らわしい奴だなぁ……なら、本人は中に居るってことだよな。
でも、うららぎが居たんじゃ銀髪の話はし難いな……また日を改めるか。
「おや? 集塵くんじゃないか……どうしたんだい?」
お! 丁度いいとこにモウツαが顔を出してくれたぞ! だけど……うららぎが邪魔なんだよなぁ……。
「いやー、実は銀髪のことで、ちょっと話したいことがあって……この間話した、ほら」
「あー……なるほどね。分かったよ。良かったら中に入ってよ」
「いやでも……」
俺はチラっと横目にうららぎを見る……空気を読め! うららぎ!
「あーー! なんか僕は邪魔みたいですねーー! 大切なお話があるようですのでーー部屋に戻りますーー!」
空気を読んだ……流石、接客業……じゃないか……このピンクのうさぎは何やってるんだ?
「それじゃあモウツαくんーーまたねーー!」
「うん。またね」
うららぎはモウツα に声をかけると小さな旗を振りながら隣の部屋に入っていった。
「隣だったのか……」
「さぁ、立ち話しもなんだし中に入ってよ。散らかってるけどね」
「ありがとう。それじゃあ、お邪魔させてもらおうかな」
「どうぞ」
俺は先に進むモウツαの代わりにドアを閉める。鍵は一応かけておくか……。
「これでよし! っと……もう奥にいってしまったか……お邪魔しまーす」
同じマンションなので部屋の作りは俺の住むそれと変わらない。玄関から部屋までの通路を抜けると……。
「お客様さまーーーー! またーーお会いしましたねーー!」
「えっ!?」
――な……なんで、うららぎが居るんだよ……。
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