第89話 ねこじょカルビピザサンドはあたしのもの!

 五十嵐さんは、ねこじょカルビピザサンドを手に入れる為に肩ちゃんとスマホのコミュニケーションツールで交渉中だ。


「どう? 譲ってくれそうか?」


「むぅー。今後あたしが肩のことを五十肩と呼ばないことを条件にしてきた……これは難易度が高いわね……」


「いや……物凄く簡単に聞こえるんだが……それくらい応じてあげればいいじゃねーか」


「集塵くんが、どうしてもそうしなさい! っていうのなら、してあげてもいいけど……」


「別にどうでもいいです……」


 本当にどうでもいいんだよなぁ……それより銀髪のことが心配だから早く家に戻りたいというのが正直なところだ。


 ……となると、ここは俺が折れるべきか……そんな大袈裟なことじゃないけど、それこそ別にどうでもいい。


「どうしてもそうしなさい」


「え? なに? どうしたの突然」


「肩ちゃんのことを今後、五十肩と呼んでは駄目だ。俺はそう願っている」


「どうしても?」


「うん。どうしてもだ」


「むぅー……」


「ほら、これでねこじょカルビピザサンドも手に入るんだぜ」


「どうしてもなの?」


「しつこいぞ」


「あっ! 怒った! そんな怒るようなこと?」


「怒ってないから。大体、呼び方なんてそんなに拘ることでもないだろ? しかも姉妹なんだし普通に名前で呼び合えよな」


「……仕方ないなぁ」


「よし! 決まりだ」


 五十嵐さんは若干不服そうな表情を見せながらもスマホで入力をはじめた。


「譲ってくれるって、すぐ返事きたよ」


「おお! 良かったじゃねーか! あとは俺や銀髪、ねこの分を決めれば終わりだな」


「うん! それと肩のお菓子もね……エヘヘ」


「そうだった」


「あたし肩のお菓子を見つけてくるね。集塵くんはお弁当決めてて」


「お、おう……わかった」


 五十嵐さんは俺にねこじょピザサンドを預けると、お菓子コーナーがあるだろう場所へと走っていった。


 さてと……俺は弁当を選ぶとするか……いつも棚の下の方につまれ……って、ない! カルビ炭火焼き弁当がないじゃねーか!


「売り切れか? いつもより店にくるの遅かったしなぁ……困ったな」


 俺とねこは別にカルビ炭火焼きじゃなくても問題はない。ただ銀髪は食べたいだろうな……病み上がりで戻ってくるんだし、出来れば好きな物を食べさせてあげたい。


「うーん。これは困った……」


「どうしたの?」


「あ……もう見つけたのか?」


「うん。すぐに見つかったよ? うさぎのピザスナックだって」


「なんだかペットの餌みたいだな……大丈夫なのか?」


「大丈夫よ……このお店の自社ブランドか何かじゃないかしら? 簡素なデザインのパッケージだし。それより何かあったの?」


「実は……」


 ――まさかカルビ炭火焼き弁当が売り切れているなんて……想定外だったぜ。












 






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