俺は堀江がキライだ！？ ～ある日コインランドリーで出会った謎の銀髪少女と後輩JK美少女との関係を堀江という名が俺を振り回す。俺はまともに恋が出来るのか？

第90話 銀髪が好きなもの

　カルビ炭火焼き弁当がないなんて……本当に想定していなかった。何事もあって当たり前なんて思ってはいけないのかも知れないな……。

「五十嵐さん。残念なお知らせがある」

「うん……」

「カルビ炭火焼き弁当……売り切れなんだ……」

「そうなの？　じゃあ違うの選ばないとね？」

　あれ？　五十嵐さんの反応が思っていたより軽いな……ショックじゃな……いか……別にカルビ炭火焼きを買いにきたわけじゃないものな。

　俺だってショックを受けているのは銀髪の好きなものを買ってあげられないということに対してだけだし、弁当の種類なんて何でもいい。

「まぁ、俺やねこは何でもいいと思うんだ。でも銀髪は……」

　五十嵐さんは、一瞬ハッとしたような表情を見せた。なぜ俺が困っているかを理解してくれたようだ。

「そうよね……銀髪ちゃんカルビ大好きだもんね」

「そうなんだよ」

「どうするの？　似たようなお弁当は無いのかしら？」

「似たようなもの……」

　俺は弁当コーナーの棚を舐めるようにして見渡す。だけど、カルビ炭火焼きと似たものどころか肉の弁当自体が見当たらない。あるのはパスタだとかの麺類、オムライスやのり弁、おにぎりといったところだ。

「駄目だ……どれもカルビ炭火焼きとはかけ離れている」

「銀髪ちゃんって、他になにか好きなものって無かった？　喜んで食べていたものとか」

「あいつ基本、なんでも喜んで食べるからな……」

「集塵くんが鈍感すぎるんじゃない？　銀髪ちゃんと初めて合った時から今日まで一緒に生活してきたんでしょ？　一つくらい何か思いつかないの？」

「そんなこといわれてもなぁ……」

　銀髪が他に喜んで食べていたものか……とはいえカルビ炭火焼き弁当ばかりの日々だったし……他に何か喜んで食っていたものなんてあったかな？　

　初めて合った時から今日まで食べてきたもの……。

　うーん……あっ！　そういや、あいつ初めて会った時に俺のクロワッサン勝手に何個も食べて……。

「！？」

　あったぞ……クロワッサンだ……あいつ、あれを滅茶苦茶うまそうに食べていたよな。

「あれなら喜ぶかもしれない……」

「何か思いついた？」

「ああ、一つだけあったよ五十嵐さん。俺たちが初めて銀髪と出会った場所であいつが口にしていたものだ」

「あっ！」

「「クロワッサンっ！！」」

「ならクロワッサン買っておいてあげましょうよ！　パンコーナーもう一度見てみましょう！」

「いや……待って五十嵐さん。あのクロワッサンはコンビニのパンコーナーのものとは別格なんだ。あれを買えるスーパーまで行かないと」

「なら、急いでいこうよ。あっ……でもお店開いているかしら？」

「それは大丈夫だ。あのスーパーは二十四時までは営業していたはず。それより問題なのは、あのクロワッサンが売れ残っているかだ」

「そうね……でも行ってみましょ」

「ああ、急ごう。俺とねこの飯もそっちで選ぶことにする」

　ねこじょカルビピザサンドを自動精算システムで通した俺と五十嵐さんは急いで店内を出る。

「集塵くん……傘……持ってる？」

「あるわけないだろ……」

　――店内を駆け足で出た俺たちを待っていたのは土砂降りの雨だった……。