第87話 ピザパンが見つからない……!
「うーん。ピザパンらしきものは見当たらないなぁ……」
「ちゃんと下の棚の奥まで見た?」
「いや、五十嵐さんも手前だけ目視するんじゃなくて、しっかり探してくれよな」
「み、見つからないようなら仕方ないわね……」
「探す気ないだろ……」
うーん。これだけ探してもないのであれば仕方ないか……って、まてよ……。
「あのさ……ピザパン無かった場合って代わりに何を買えばいいんだ?」
「そういえば何も言ってなかったわよね? いらないんじゃない? お弁当だって食べてたじゃない」
「うーん。とはいえ肩ちゃんだけ何もないというのは……」
一人だけ何もない状態で皆んなは飯を食うっていうのも可哀想だし、食べている姿を無言で見つめられていても食った気がしなくなりそうだ。
「いや、やはり何か買っていこう。今スマホで連絡とれない?」
「いいわよ。ちょっとまってて、カイン送ってみる」
五十嵐さんはポケットからスマホを取り出すと慣れた手つきで文字を入力し始めた……指の動き滅茶苦茶速い! 指が見えないんだけど。
それにしても、こういう時には無料コミュニケーションツールのカインは役に立つな。通知に気がついてくれればいいけど……。
「送ったよ。返事くるかしら」
「こなければカルビ炭火焼き弁当にするまでだ……」
「あっ! 既読ついた! 返事書いてるみたいね、入力中の表示出てる。えーと……ピザ味のものなら何でもいいよ……ですって」
「ピザ味にこだわるなぁ……」
「どうしてもなかったらカルビ炭火焼きにすると送ってくれないか」
「わかった。送るね」
これなら何か指定してくるだろう……流石に二度同じ弁当は食わされたくないだろうからな。
「返事きた。ピザ味のお菓子でもいいって……カルビ買ってきたら一生怨むって書いてあるわよ? 怖い方の漢字で書いてある。やだ怖い」
食べ物の恨みは何とやらか? 仕方ねーなぁ……まぁ、お菓子でいいなら何とかなるかもな……。
「とりあえず弁当コーナーも見てみよう。もしかしたらピザ味の何かがあるかもだし」
「それもそうね……うん。お弁当コーナーいってみましょ」
五十嵐さんは、そういうと突然俺の手首を掴み弁当コーナーの方へ引っ張っていく。なんて言うかこういったスキンシップは何度やられてもドキドキしてしまうな……相手が五十嵐さんだから尚更だ。
「あ、あ、あのな……手、離せよな……弁当コーナーなんてすぐそこだろ」
「何どもってるのよ? もしかして恥ずかしがってるの?」
「い、いや、そういうのじゃないけど意味ないだろ?」
「意味って?」
意味……そりゃあ、子供じゃあるまいし……って、なんだか考え出したら余計に恥ずかしくなってきたかも……。
「ん? なーに?♡」
うわっ! 顔を近づけるな……しかもなんだその無茶苦茶可愛い笑顔……絶対からかっているだろ……まずい、このままでは恥ずかしがり屋さんのウブな青少年かと思われてしまう。
「な、なんでもねーよ」
「照れてる、照れてる♡」
「べ、弁当を探しに行こう……」
「うん♡」
……駄目だーー! 敗北感が半端ない……この瞬間は無かったことにしよう……。
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