第85話 五十嵐さん目覚める……!

 部屋に戻ってきた俺たちは銀髪が戻ってくるまでの間とりあえず腹ごしらえをしようと決めたが冷蔵庫の中は空っぽだ。


 さて……出前をとるか、うさぎのらびっとまで買い物にでるか……だよな。


 肩ちゃんは我慢が出来なくなったのか食べ残していたカルビ炭火焼き弁当を自らレンジで温めて、それを頬張っている。


「あれ? 集塵くん戻ってきていたんだね。銀髪ちゃんは?」


 五十嵐さん……肩ちゃんのレンジの音で目が覚めたのかな?


「五十嵐さん、起きたのか。よく眠っていたから声はかけなかったぜ」


「気を使ってくれたんだ? ねこちゃん見てたら眠くなってしまってベッドの上で横になったら寝てしまったみたい……エヘヘ」


「まぁ、眠くなってベッドの上に横になったら寝てしまうよな……」


「そういえば銀髪ちゃんは? 大丈夫だった?」


「とりあえずモウツαくんに預けてきたよ。きっと何とかしてくれると思う。根拠はないけどな」


「え? なんでモウツαくん?」


「コミアさんの弟はモウツαくんだったんだ。しかも五十嵐さんと同じ五階だったんだぜ? よく今まで気が付かなかったな」


「そうなのー! そんな有名人がこのマンションに住んでいるなんて」


「驚きだよな。コミアさんの弟っていう事実の方がもっと驚いたけど」


「そ、そうね……でもあんな凄い人が診てくれるのなら安心ね?」


「うーん。分野が違う気するんだけどな……でも今は頼るしかない」


 俺がそのことをモウツαに言った時、たしかあいつは自分の分野に近いなんて言ってたよな……あれはどういう意味なんだろうか?


「集塵さん。出前頼まないんですか? 私やっぱりお弁当じゃないのにします。温め過ぎちゃったみたいでお肉が焦げて固くなってしまいました」


 肩ちゃんが会話に入ってきた。そういえば、たしかに猫舌の割に長く温めているなとは思ってはいたけど……どうして長くしたんだ……。


「あら? 五十肩は食事中?」


「五十肩って呼ばないで!」


「うーん。なんだが、あたしもお腹空いてきちゃった」


「なんで無視するのっ!」


「別に無視してないわよ。集塵くんは夕ご飯どうするの? 銀髪ちゃんが戻ってくるまでに食べておいた方がいいんじゃない?」


 肩ちゃん、ムスっとしてるな……。


「今、丁度その話をしていたところなんだ。残念ながら冷蔵庫には調味料しか残っていなくてな、出前か買い出しかで悩んでいる」


「出前? この時間まだやってるのかしら?」


「確かに今からだと店舗限られてくるか……」


「そうなると買い出しに決定かな? ピザは頼みたくないし」


「え? ピザ頼むんですか! 集塵さん、私も食べます!」


「いや……だから頼まないって……」


「あたしもピザでいいわよ?」


「ピザはコスパ悪いの! どうせお前ら一枚頼んだだけじゃ満足しないんだろ? それに銀髪が戻ってきたときのことも考えるとピザ数切れじゃ絶対足りない……」


「そうねぇ……仕方ないかー。あたしは足りなくないけど銀髪ちゃんのこと考えたら買い出しの方が賢明かもね」


「買い出しならピザパン買ってきて下さい! もうお口の中がピザになってしまいました」


「ん? 肩ちゃん一緒にいかないの?」


「行かないです。だってみんな出てしまったら銀髪ちゃんが戻ってきた時に寂しい思いさせちゃうじゃないですか。あとだりーし」


 ん? 気のせいか今すっごく、らしくない言葉が耳にはいったような……まぁ、それはどうでもいいか……確かに肩ちゃんの言う通りだ……そうなると夜道を五十嵐さん一人で歩かせるわけにもいかないし、俺が行ってくるか……。


「よし! じゃあ俺が一人でいってくるよ」


「駄目よー。あたしも行くわ」


「え!? なんで?」


「当たり前じゃない。集塵くん一人で買いに行かせたらカルビ炭火焼き弁当しか買ってこないんですもの」


「いや……ちゃんと要望いってくれたら買ってくるし……」


「いいから、いいから。寝起きで丁度、夜風に当たりたいなーなんて思っていたのよ。エヘヘ」


「そ、そうか……それなら肩ちゃん、ねこと一緒に留守番たのむよ」


「ピザパンお願いしますね!」


「おっけーぐーぐぐだぜ!」


「うわぁ……それもう古いですよ……」


「そ、そうなのか……」


 ――こうして俺と五十嵐さんはうさぎのらびっとへと向かった。出来るだけ早く戻ることにしよう……出来れば銀髪を出迎えてあげたいからな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る