第82話 銀髪を助けて……!
このマンションに住んでいるコミアの弟がモウツαだったなんて……しかも五十嵐さんや、うららぎと同じ五階の住人だ。
本当に、こいつのことを信用していいものだろうか……。
「どうした? 早くその子をこっちに」
どうする……コミアの弟とはいえ会ったばかりの人物に銀髪を任せていいものか……だが四の五の言っている場合じゃないのも確かだ。
「集塵さん! モウツαくんなら大丈夫です! 信じましょう!」
肩ちゃんはモウツαのファンだからフィルターかかりまくりだもんな、すんなり受け入れることが出来るんだろう。でも俺は……。
「坊や、何をもたもたしてるの? あたくしの弟じゃ不満?」
不満とかそういうのじゃない……俺は銀髪の顔を確認した。さっきより呼吸が荒く感じる。これ以上あちこち連れ回すのも危険か……仕方がない……モウツαを信じよう。
「……モウツαくん。頼むよ」
「僕にまかせれば大丈夫さ。そうと決まれば早速準備をしよう。コミア姉さん、その子を部屋まで運んでくれない?」
「いいわよ。坊や、その子を渡しなさい」
なにその悪者みたいな言い方……ただでさえ不安なんだから、もっと別の言い方してくれよ。
「た、頼みます」
俺はコミアの差し出した腕に銀髪を預けた。
「奥の部屋でいいんでしょう?」
「そうだね、そこでいいよ」
コミアは銀髪を抱えてモウツαの部屋に入っていく。俺たちも一緒についていった方がいいんじゃないだろうか?
「えーと、俺たちも一緒についていてあげたいんだけど……いいかな?」
「悪いけど、この部屋にはコミア姉さんしか入れることは出来ない。心配なのは分かるけどね」
発明家だし見せられないものがあるんだろうか? それなら仕方ないか。
「そうか……分かった。それなら俺たちは一階の部屋に戻るよ」
「そうしてくれると助かるね。あの子を治したらすぐに君の所へ連れていくよ。コミア姉さんの部屋の隣なんだろ?」
「え? あ、ああ、そうだけど。何で知っているんだよ?」
「コミア姉さんが引っ越して来た日の夜に君たちの愚痴を散々きかされたからね」
どんな愚痴をいってたんだあの人は……。
「そ、そうだったのか。銀髪のこと……本当に頼む」
「あの子のこと、よっぽど大切なのかな? 何度も言うようだけど大丈夫だよ。それじゃあまたあとで……」
モウツαは、そういうと部屋のドアを閉めた。とりあえず俺に出来ることは此処までだ。あとは部屋で待つしかない……。
「肩ちゃん。部屋へ戻ろう」
「あ、はい!」
――ガチャ
「ちょっと君たち!」
「ん?」
俺たちが部屋へ戻ろうとすると背後からドアの開く音とともにモウツαの呼ぶ声が聞こえてきた。
「なに?」
「悪いのだけど、あの子を診ている間一つ頼まれてくれないか?」
「いいけど、何を?」
「君たち音楽は好きかい?」
「音楽? まぁ……あんまり普段聴かないけど嫌いではないよ?」
「あまり聴かないのか……うーん困ったな」
「あの! 私は好きです! 色々な曲を普段から聴いてます!」
「本当かい! それは助かるよ。それじゃあ君にお願いしよう。君の名前は?」
「えと……ごじゅ……か、肩です!」
「肩さんだね? OKだ」
モウツαは首にかけたピンクのヘッドホンを外すとハウジングの表面についたタッチパネルを押し始めた。
「えーと。か、た、だね」
――ピッ
「よし! これで登録完了だ。肩さん、これを頭に」
――肩ちゃんはモウツαからヘッドホンを受け取ると、言われた通りにそれを頭にはめた……早く銀髪診てくれねーかな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます