第44話 流行りもの……!
ヤクモの件から数日……あれから割と平穏な日々が続いて、今も銀髪は俺の目の前でカルビ炭火焼きチップスをバリバリと頬張っている。うさぎのらびっとで限定販売されていたスナック菓子だが、俺はまだ一枚も食べれていない。
「なあ銀髪。そろそろ俺にも一枚くらい食べさせろよな」
「やだ!」
「それ、俺が買ったんだからな? 何で食べようとする度、指に噛みつくんだよ……」
「これは、わたしのだ」
こりゃ駄目だな……仕方ない……今度こっそり買って家に着く前に食べ切ってしまおう。もっとも匂いでばれそうな気もするが……
――ドンドンドン! ドンドンドン! ドンドンドンドンドンドンドン!
「本当にあの呼び方なんとかならねーかな……五月蝿いよ」
「あの女は何を考えているんだろうな?」
「お前もだよ」
銀髪は一瞬ムスっとした表情を見せ再びチップスを食べ始めた。えーと、五十嵐さんが来たということは結構いい時間なのかもしれない。
「うーむ。相変わらず外の光が反射して見にくい時計だぜ……えーと、もうすぐ十七時……ん? 今日はやけに早いな?」
――――ドンドンドン! ドンドンドン! ドンドンドンドンドンドンドン!
「仕方ねーなぁ……」
俺はしつこく鳴り響く近所迷惑な音のもとへと向かった。そろそろ近所から苦情がきてもおかしくない……もう合鍵でも作って渡しておこうかな。
――――ドンドンドン! ドンドンドン! ドンドンドンドンドンドンドン!
「分かった、分かった! 今、開けるから待ってろ」
俺は急いでドアを開くと、やはりというか、もはや間違えることはないであろう客人の姿を確認した。
「おっそいよ、集塵くん! 見てよ、ほらっ! 手が赤くなってる!」
五十嵐さんの手は色白のせいもあって、うっすら赤みがかっている。たしかに痛そうではあるが、そこまでなる前に何故その行為に及ぶのかを小一時間くらい突き詰めたい。
「それは可哀想だが、だったらインターホンを使えよな……何回言わせるんだよ」
「それなら、あたしがドアを三回叩くまでに開けなさいよね?」
「言っている意味が分からないんだが……」
まったく相変わらず
「一つ訊かせてくれ……その段ボール箱はなんだ?」
五十嵐さんは一瞬キョトンとした表情を見せたが直ぐに何かを思い出したかのように、まるで園児が誕生日プレゼントを貰った時の輝いた目を俺に向けてきた……ぶっちゃけ嫌な予感しかしない。
「そうっ! これ! 今流行りのウラライヤが手に入ったのよーー!」
なんだか知らんが一人で盛り上がっている……段ボール箱に向ける指先がピンと張って力強い。
「ウララ、なに?」
「ウラライヤよっ! 知らないの? 今流行りのバーチャル執事スピーカーよっ!」
「はぁ……」
「クラスの子から貰ったのー! なんか上手く言うこと聞いてくれないらしくて嫌になってしまったんですって」
「それ貰ってきたから嬉しくなって早々に帰ってきたのか……」
……なんかすげー面倒くさそう……。
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