第43話 制限時間……!

 虹色の光に包まれたねこの身体はいつしか完全に人の形となり、その姿はまるで銀髪のように小柄で、栗毛色のロングな髪をした三白眼の少女となった。


「ヒ……ヒカリ……ちゃん……」


 ヤクモは信じられないというような顔をして呆然と立ち尽くしている。ねこがまさか……人間? だったとは……ん? 人間なのか?


「よく見るにゃ……わたっちはこれからずっとこのままにゃ」


「……」


 ヤクモの反応がないな……まぁ、そりゃショックだよな? しかし、このまま大人しく諦めるのだろうか……逆恨みとかしないよな? 


 むむ? こちらに近づいてきたぞ。俺は警戒して瞬時に身構えたが、ヤクモは少し手前で歩みを止める……何か言い出しそうだ。


「……どうやら人違い……いや、猫違いをしていたようです。いやー皆さんお騒がせしましたー。僕はこれにて失礼致します」


 ヤクモはそう言うと俺たちに背を向け、それ以上は何も言わずにこの場から立ち去ってしまった。


「切り替え早すぎるだろあいつ……二度とくるなよな」


「集塵……ヤクモは悪い奴じゃないぞ」


「ん? あ、ああ。そうか……」


 銀髪はきっとあの全身タイツで、俺たちには分からない何かヤクモの想いを知ったのだろう……色々あったが俺は素直に銀髪の言葉に賛同することにした。


「もうだめにゃーーーー!!」


 ねこが突然叫び出したと思ったら再び身体が虹色の光を放ち、ねこのような姿に形が変わっていった。こ、これは!?


「戻るにゃーー!!」


 ねこの叫びと同時に光は収まり、そこには俺のよく知る猫のような生き物が二本足で立っていた。


「また戻ってるじゃねーか……」


「当たり前にゃ! 今のこの姿が本当の姿で、さっきのが仮の姿にゃ! わたっちはあのような姿に化けることが出来るにゃ!」


「へーお前すげーな……何ならさっきの姿のままでも良かったんだぜ?」


「それは無理にゃ。アレは制限時間があるにゃ。今のわたっちの力では数分しか姿は変えられないのにゃ!」


「ただの化け猫じゃねーか……微妙な特技だな」


「でも、そのおかげであたしたちも助かったわけだしね! エヘヘ」


「まぁ、そりゃそうだな」


「集塵! 疲れたぞ!!」


「ん? あーそうだよな。お前は病み上がりだったし」


「なんか食わせろ!」


「分かったよ。じゃあ、とりあえず五十嵐さんの部屋に戻ろうぜ」


「なんであたしの部屋なのよ。集塵くんの部屋へ戻るに決まってるでしょ?」


「目の前なのにケチケチするなよ」


「集塵くんだけは絶対入れてあげない!」


「……」


 ――こうしてヤクモとの戦いは幕を閉じ、俺たち四人は一階の部屋に戻ることにした。


 ……それにしても、ねこの変身? といい、この間の古代やリュウイ……途中スペアリブ配ってた変な女もいたような? まぁ、あれは普通に変な女なんだろう……あとは、うららぎとヤクモか……


 銀髪に出会ってからというもの立て続けに変なやつらと遭遇する体質になってしまった。


 何日か生活を共にしてきて、すっかり忘れていたというか馴染んでしまったと言うべきか……そもそも銀髪自体も謎が多すぎるんだよな……少しずつでも探っていく必要があるのかもしれない……。

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