第39話 逃げろ……!!
俺たち四人はローテーブルの上に顔を突き出し、五十嵐さんから作戦の説明を真剣に聞いていた。意外だったのは銀髪までもが皆と一緒に顔を突き出して計画に参加していたことだ。
てっきり俺たち三人を横目に、飯を食い続けていると思っていたんだけど……こいつに手伝わせて大丈夫かな……
「作戦はこんな所かしら? 再確認してみる?」
「なら順番に役割を口に出していこうぜ」
「そうねー。その方が分かり易いかも」
「じゃあ、まずは一番最初に行動を移す俺からだな」
「うん。それでは集塵くんからね。ハイっ! スタート!」
五十嵐さんは顔の前で小さく両手を合わせ、パンっ! と小さな音を出して見せる。スタートの合図のつもりなんだろう。
「まず俺がヤクモの覗く窓の前に立って視線を
「わたしは、そこに置いてある女のバッグを持ってきたらいいんだな?」
銀髪の奴、ちゃんと出来るのか? 心配だなぁ……
「最後は、あたしね。銀髪ちゃんからバッグを受け取って、ねこちゃんを入れて部屋を出るわ」
「それで作戦完了だな」
「この作戦は集塵くんの立ち位置が物凄く重要だから、そこは頼りにしてるわよーエヘヘ♡」
「おう! 任せとけ!」
「みんな巻き込んでしまって本当にごめんなのにゃ……」
「その辺は気にするなよ。じゃあこれで再確認も出来たし早速はじめようぜ! みんな準備はいいか?」
そうして俺たち四人は目を合わせると、あの言葉を小声で発した。
オッケーグーググ!
――さてと……ヤクモはどうしてるかな? 俺は窓の方に振り返るとヤクモは微動だにせず、こちらを見つめている。これは中々怖い……夜だったら心臓に悪すぎる。
俺は後ろ手でグッドマークを出し、みんなに作戦スタートの合図をだした。
「やあヤクモさん! さっきは相手出来なくて悪かったな。お詫びに今から俺と話さないか?」
俺はヤクモ側から部屋の様子が見ずらい位置に立つと、ヤクモに窓越しから話を続けた。
「お前の探しているヒカリちゃん? なんで此処にいるって分かったんだよ?」
ヤクモは窓の向こうで何やら口を動かしている。ん? 俺の声は届いているはずなのに、何で俺にはヤクモの声が聞こえないんだ……そんなに分厚いガラス窓でもないよな?
お互いの声が聞こえていないのか?
「悪いなヤクモさん……ちょっと声が聞こえないぜ!」
何だか楽しくなってきてしまった……試しに声を出さないで口パクしてみよう。俺はヤクモに向かって話しかけているふりをしてみた。
お? 何やら怒鳴りつけているような雰囲気だな……声出してないのに……それに対して怒ってるのかな? さてと……時間稼ぎは十分出来ただろう。
五十嵐さんも、ねこをトートバッグに入れて移動したはずだ。俺は振り返って部屋の様子を確認してみた。
ん? 五十嵐さん、まだ移動してないのかよ! 遅すぎだろ! さては銀髪が遅れたか? まぁ、バッグにはしまったようだし、もう大丈夫……じゃねー! バッグから頭はみ出してるじゃねーか!
「五十嵐さん! ねこの頭はみ出てるぞ! 隠して!」
ドンッ! と突然もの凄い音が部屋に響いた。
「しまった! 見られたかっ!」
俺が振り返ったせいで部屋の様子をヤクモに見られてしまった!
ヤクモは窓ガラスに顔が貼りつくくらいの勢いで部屋の中を覗き込み、ドンッ! ドンッ! と何度も拳を叩きつけてきた。
「五十嵐さん! 気づかれた! 早く逃げて!」
「なにしてるのよー!! バカっ!」
「いいから早く逃げろ!」
五十嵐さんは、俺が叫ぶとねこを入れたバッグを抱えて玄関へと走っていった。逃げ切ってくれよ……
そうだ! ヤクモ! 俺はヤクモのことが気になって窓の様子を確認した。
「いない! まさか玄関の方に回り込んだのか!」
恐らく五十嵐さんが駆け出したのを見てマンションの入り口側に向かったのだろう。俺も後を追わなくては!
「あ……」
五十嵐さんの後を追う為、玄関へ走り出そうとした瞬間、テーブルの前に立つ銀髪と目が合った……なにをボーっとしているんだ? まぁ、いい。こいつも連れていくか……
「銀髪! お前もこい!」
「おう!」
そして俺たち二人は部屋を飛び出した……。
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