第38話 作戦会議……!
……見てはいけない物を目にしてしまった。
ようやく長い道のりを経て、みんなで昼飯というタイミングに俺の目にはヤクモの鋭い眼光が映った。
いつから居たのか、部屋の窓側に回り込んだヤクモはそこから部屋を覗き込んでいる。これだから一階は危ないんだよな……
五十嵐さんとねこは窓を背にしているから、まだ気がついていない。銀髪は……オムライスにケチャップで描かれた、ねこじょの絵に夢中だ……
それにしても、しつこい奴め……あいつの狙いはねこだったよな? ねことの接触を避けるにはどうすればいい……悠長に弁当を食っている場合ではない。
「三人とも……弁当はうまいか?」
「美味しいけど。それがどうかしたの?」
「うまいにゃ!」
銀髪は反応は無しか……まぁ、とりあえず一刻も早くヤクモのことを、みんなには知らせよう。突然、窓を割って侵入してくる可能性だって考えられるし……
突然の侵入が行われた場合、驚いたねこはショックで倒れてしまうかもしれないし、五十嵐さんはオムライスが喉に詰まって別の世界に旅立ってしまうかもしれん……
銀髪に至ってはオムライスを手掴みで食べ始めて部屋の壁や床をその手で真っ赤に染め始めることも……想像しただけでも恐ろしすぎる。
地獄絵図だな……
「み、みんな……今から話すことを、大人しく黙って聞いてくれないか?」
「さっきから、なによ? 早くいいなさいよね。ご飯冷めちゃうじゃない」
「ねこも分かったか? 大人しくしていろよ?」
「ご飯たべちゃだめなのにゃ?」
「……いや、大人しく食べ続けてくれ」
銀髪は確認しても無駄だろうから放置でいいだろう。騒ぎ出したら最悪強引に口でも塞げばいい。
「いいか? 話すぞ?」
「早くしなさいよ……」
「単刀直入に言うけど、今お前たちの背後にある窓からヤクモがこちらを観察している」
「にゃんじゃっ! っ痛い……にゃ……」
危なかった……ねこが大声を出し切る前に五十嵐さんの肘鉄がヒットしたようだ。ナイスフォロー!!
「ヤクモはもしかしたら突然、後ろの窓を破壊してくるかもしれない……」
「ちょっとー!! そんなっ ……いっ……痛いよ……集塵くん」
何とか蹴りが届いたな……俺の足が長くて良かった。危うく五十嵐さんが取り乱す所だったぜ……五十嵐さん滅茶苦茶睨んできてて怖いけど……
「ヤクモの狙いは、ねこだ……なんとかして、ねこを守らなくてはいけない」
「集塵……ありがとにゃ」
「何とかするってどうするのよ?」
「……」
「考えていないわけね……」
「そうとも言う」
「そうとしか言わないからね」
「ねこさえ、この場から避難させることが出来ればそれでいいんだ」
「そうねぇ……」
「そんな話は弁当を食べてからでいいではないか」
お? いきなりどうした銀髪。
「わたしは、お腹が空いてるの! だから食べ終わるまでは何もしたくないの!」
「そうよねーやっとご飯を食べることが出来たのに、次は夕食になっちゃいそうだもの」
「ねこも怖いけど、お腹すきすきなのにゃ……」
「うーん。まぁ、たしかに腹が減っては戦が出来ないというしな……」
俺も、こいつらも頭がお花畑だな……
「OKわかった! とりあえず食いながらゆっくり考えよう」
「決まりね! エヘヘ♡」
「了解にゃ!」
「うまいうまいーー!」
銀髪の一言から、ひとまず俺たちはヤクモに見つめられながら弁当を頬張り作戦を考えることにした。俺の食べたカルビ炭火焼き弁当は肉こそ無かったが白米についたカルビの脂とタレで意外にも満足はできた。
銀髪たちもオムライスには大喜びで食べ続けていた。俺も一口欲しかったぜ……
「ふうー美味かった! 満足満足!」
「それで集塵くん。何かいい作戦は思いついたの?」
「……いや……まだだな」
「なによ、ただお弁当食べていただけなの? 信じられない」
「そういう五十嵐さんはどうなんだよ?」
「ふふ。勿論考えていたわよ? いい作戦があるの」
「流石にゃ!」
「集塵とは大違いだな」
銀髪には言われたくないぜ……でも良い作戦があるなら早速それを実行したいな
「で? どんな作戦なんだよ」
「ちょっとみんなテーブルの中心に集まって。今から話すわ」
――こうして俺たちの戦いの火蓋が切られた……。
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