俺は堀江がキライだ!? ~ある日コインランドリーで出会った謎の銀髪少女と後輩JK美少女との関係を堀江という名が俺を振り回す。俺はまともに恋が出来るのか?
第16話 目指せプロゲーマー! 牛タンに憧れちゃう!
第16話 目指せプロゲーマー! 牛タンに憧れちゃう!
「まぁ、適当に座れよ……」
何だかんだで結局怪しい奴とまた関わりを持ってしまった……まったく銀髪と出会ってからというもの変なウサギは出てくるし今度は黒い怪しいネコもどきだ。
とりあえず多分ネコだと言い難いので、こいつのあだ名は、ねこにしよう。
「こ……ここに座っていいかにゃ?」
意外と礼儀正しい奴だな……俺は軽く頷くと、ねこは俺の部屋に置かれているクッションの上にちょこんと正座し、テーブルの上に置かれている空箱に残された黄色いお新香を凝視している。
「これは……もしかしてお新香というものかにゃ?」
お新香知ってるのかよ……。
「興味あるのか? 残り物だけど食ってもいいぜ」
「ほ! 本当かにゃ!? 本当にいいのにゃ!」
「ああ、全部くっても構わないぞ」
「いただくにゃーーーー!!」
ねこは指先から伸びた爪をお新香に近づけると、何処から現れたのか銀髪が突然、俺の視界に入りこんできた。
「食べちゃダメーーーーーー!」
銀髪は叫びながら、ねこの顔面に向かって飛び蹴りをくらわした。少しは加減しろよ……壁まで吹っ飛んでるじゃないか。
「いっ! 痛いにゃー! にゃにをするにゃーー!」
「それはわたしの、お新香だーーーー!」
嫌いで残していたんじゃないのかよ……。
「いきなり顔を蹴るにゃんて! なんて失礼な奴らなのにゃ!!」
「いや、蹴ったのは銀髪で俺は何もしてないだろ……」
しかし、一体コイツは何なんだ……迷子か? それにしても誰に、しつけをされたのか知らないが二本足で立って歩行はするし話すことも出来る。正座も出来て礼儀正しいなんて相当優秀な飼い主だったんだろうな。
「で? お前なんで道で倒れていたんだよ、家出か?」
「お前たちは謝るということを知らないのかにゃ?」
「いや……だから俺は何もしてないだろ」
「まあいいにゃ、わたっちを助けてくれた恩もあるからにゃ……許してやるにゃ」
ねこは両手で身体の埃を払うような動きをすると、ゆっくりとクッションの上に戻った。
「分かったにゃ……わたっちが何故、旅をしているのか話してやるにゃ」
「旅してたのかよ……」
よく分からんが、事情を話してくれるみたいだな、特に面白いことは起きそうにないし話しを聞いたら早々に帰ってもらうか。
「……話していいかにゃ?」
「はやくしろよ」
「わたっちはプロゲーマーを目指して旅をしているのにゃ!」
プロゲーマー……ねこなのに?
「今、ねこの癖にとか思っていたろにゃ!」
「思ってねーよ」
「集塵、嘘は良くないぞ?」
「お前は黙ってろよ……」
まったくいつ心を読まれるか油断も隙もあったもんじゃないな……ん? やけに大人しくしていると思っていたら、お新香食ってるのかよ。
「なんでプロゲーマーを目指して旅なんだよ? 部屋でゲームしてた方が良いんじゃないか?」
「そこなのにゃ!」
いや……
「続きを聞きたいかにゃ?」
「いいから早く話せよ、そこまで話しておいて止める気か?」
「プロゲーマーになるにはゲームで練習をしないと駄目にゃ……」
「うん」
「実は、わたっち……ゲーム機を持っていないのにゃーー!!」
「買えよ……」
「買いたくても、ねこはお金がないにゃ、だからゲームをプレイさせてくれる場所を探して旅を続けているんだにゃ」
「いや、働けよな」
「働きたくても、わたっちを雇ってくれる場所なんてないのにゃ!!」
知ってたけど……
――なるほどな、大方お金がなくて食べれない上に行き場所もなく、さ迷っていたと言うわけか……。
「ゲーム機も無いくせに、なんでプロゲーマーなんて目指してるんだよ」
「プロゲーマーで戦って優勝したら賞金が貰えるにゃ! それで、わたっちの夢を叶えたいのにゃ!」
何となく察してはいたがプロゲーマーが夢じゃねーのかよ。
「で? 夢は何なんだ?」
「お前……牛タンを知っているにゃ?」
「まぁ……」
「わたっちは食べてみたいにゃ……その昔、駅で美味しそうに牛タン弁当を食べている家族をみた時から、それに憧れ続けてるにゃ」
「集塵、牛タンってなんだ?」
「説明めんどくせーよ……お前は俺の思考を読めばいいだろ」
「ケチっ!」
牛タン弁当を食べたいからプロゲーマーになってお金を稼ぐ? 意味がわからん……思い切り遠回りをしているようにしかみえないんだが……一生食べれそうになさそうだな。
「お願いがあるにゃ!!」
「なんだなんだ! 唐突に!」
「見たところ、この貧乏くさい部屋にはゲーム機は置いて無いようにゃ」
「喧嘩売ってるのか? 余計なお世話だ」
「ここで会ったのも何かの縁にゃ! この部屋にゲーム機を置いてほしいにゃ!」
「やだ」
「にゃ!?」
なんで、まさか断られるなんて! みたいな顔してんだよ……。
ガチャ
「ん?」
「やっほー! みんな大好き五十嵐ちゃんだよ!」
「いきなり現れるなよ……」
「だって鍵開いているの知ってたし」
「親しき中にも礼儀ありという言葉をしらんのか」
「何よ、人が折角美味しい駅弁を買ってきてあげたのに!」
「駅弁? なんで急に買ってきたんだよ?」
「今日限定で白倉駅に牛タン弁当が販売されているってネットで見つけたの! 珍しいお弁当みたいで滅多に手に入らないんだって!」
「へーそれは食べてみたいな」
「でしょー? だからさ、昨日のお弁当のお礼も兼ねて人数分買ってきたから、三人でたべようよ!」
「いいねー! 銀髪も食べるだろ? あっ……」
「ん? どうしたの?」
弁当は三人分……しかも牛タン弁当じゃねーか! 状況を知らなかったとはいえ、なにこの残酷な天使は……
「そ、それにゃ……」
ねこは身体を震わせながら五十嵐さんの持つ牛タン弁当を凝視している……まぁ、無理もないか、自分の追いかけている夢が直ぐ目の前にあるんだもんな。
「なに、この黒猫! 二本足でたってるし日本語喋ってるよ!?」
「あーそいつは、ねこじゃないんだよ。ねこに見えるだろ?」
「ねこじゃないの? へー可愛い!」
切り替えはやいな……。
「もしかして、お弁当足りなかった?」
「あ、いや、それは良いんだよ」
「き、気にしなくていいにゃ……わ、わたっちは自分の力でそこに辿り着いてみせるにゃ! だから三人でたべるにゃ!」
……そういってる割には口から
「ふーん、なるほどね……集塵くん、ちょっとキッチン借りるね」
「ん? ああ」
状況を察したのか五十嵐さんはキッチンの方へ向かい、何やら食器棚をガチャガチャと弄りまわしたかと思ったら、お弁当にお皿一枚と人数分の箸を用意して戻ってきた。
「はいはい、みんなテーブルについてね」
五十嵐さんは、そういうと俺と銀髪の弁当を手渡して早速ガサゴソと開け始めたかと思うと用意してきたお皿に自分の分の弁当を分け始めた。
「こんなものかしら?」
用意されたお皿の上には分けられた牛タンと白米が汚く盛り付けされていた。これって、あいつの分だよな……。
「はい、これは……ねこ? ちゃんの分ね……エヘヘ♡」
「いいのか……にゃ……?」
「勿論だよーみんなで食べよー」
五十嵐さんは満面な笑顔を、ねこに見せている。俺なら牛タンよりもあの笑顔で飯がくえるぜ……羨ましいなおい!
「おい! わたしのも分けてやる」
五十嵐さんの行動に影響されたのか銀髪まで……仕方ない俺も分けてやるか……。
「ほらよ、俺のも分けてやるぜ! 夢が叶って良かったな!」
「……みんなありがとにゃーーーー!!」
ねこは再び大粒の涙を浮かべながら、不味そうに盛られた牛タン弁当を頬張り始めた……あれじゃ味なんて分からねーだろうな。
――そうして俺たちは小さなテーブルを四人で囲んで、夢の牛タン弁当を堪能したのだった。
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