第11話 妹がいたなんて!
「何してんのよ……銀髪ちゃん苦しがってるじゃない、可愛そうでしょ?」
そろそろ離しても大丈夫だろう、俺は銀髪の口を塞いでいた手を離すと耳元で小さく
「コンビニで美味いもの買ってやるから、今はタイツの話はしないでくれ」
銀髪は俺の目を見るとコクンコクンと連続して頷いた。まぁ、隠さなくても良い気もしてきたけど……面倒もごめんだしな。
問題は銀髪の着替えだが……そうだ!
「五十嵐さん、一つ頼まれてくれないかな?」
「お金は貸さないわよ?」
「借りたことなんてないだろ……むしろ奢っていると思うのだけど」
「一応、話だけ聞いてから考える」
「おおう……実は俺たち今からコンビニに行こうと思っていてさ」
「うん……いったら良いんじゃない?」
「いや……まだ話、終わっていませんし」
「そうなのね? 続きをどうぞ♡」
俺は銀髪の頭を杖がわりに両手を置いて話を続けた。
「コイツの格好を見てくれ、若い女の子が、この変態じみた服で街中をうろつくなんて可哀想だと思わないか?」
「つまり代わりになる服を貸せってことね」
「いやー話が早い! 流石っ! 大好きっ!」
「最後の言葉は聞かなかったことにしとくけど、無理よ」
「何でだよ」
「何でって、スタイル抜群のあたしの服がこの子のサイズに合うわけないじゃない」
「切ったら?」
「あなたの服を切りなさいよ……」
「けち!」
うーん、まあ難しいとは思っていたが、やはり駄目だったか……何か着れそうなの、ありそうだけどな。
――そうなると最悪タイツか白シャツの二択になるわけだが、どちらがマシか……全身タイツは全裸に見えるだろ? 白シャツはブカブカすぎるし下半身履いてないし、やっぱり両方ともアウトじゃないか。
「うーん、これは銀髪は留守番かな……」
「集塵! 嘘をついたのか!」
「いや、嘘というか連れて行きたくても、その格好だとな……美味しそうなもの買ってきてやるから今回は我慢しろよ」
「やだやだやだーーーーー!!」
うわっ! 始まったよ、お得意の駄々っ子。こういうの本当、面倒だわ……カーテンにでも包んで担いでいけばいいのかな?
「なんで、わたしがそんなものに包まれないと、いけないのだ」
コイツ……俺の心を読みやがったのか、そういやタイツ着てたんだっけ。
ドスッ!!
「なんか今すげー音……って、なんで壁殴ってるの五十嵐さん!」
五十嵐さんの拳が気のせいか赤くなっているように見えるんだけど大丈夫かな?
「二人ともいい? あたしとしたことが重要なことを忘れていたのよ……」
いや、それ普通に言えばよくない? 壁、殴らないでくださいよ。
「あるのよ……」
「なにが?」
「集塵くんと銀髪ちゃんが求めているアイテムよ!」
「なにか欲しがってたっけ? 銀髪なにか欲しいのか?」
銀髪は首を横にブンブン振っている。そんなに全力で振らなくてもわかるから……
「あなたたちねぇ……洋服よ! よーうーふーく! つまり着替えね……」
「あーそうなんだ、じゃあそれ貸してくれよ」
「少しは驚くなり喜んだりしなさいよね……」
「喜んでやれよ、銀髪」
「あなたもよっ!」
いずれにせよ良かった。これで出かけられそうだな……そうと決まれば早速、着替えを用意して貰うかな。
……それにしても、さっきはスタイル云々で断ったくせに、どういうことなんだ?
「ところでサイズの問題は大丈夫なんだよな?」
「多分、大丈夫だと思う。実はあたしの妹が前に泊まりに来たとき、便利だからって何着か置いていったのよ。妹の方が少し背が大きいけれど、問題なく着れるはずよ」
「やったな銀髪! これで変態のレッテル貼られなくて済むじゃないか」
「わたしは変態だなんて思ったことは無いけどな」
しかし、まさか五十嵐さんに妹がいたなんて……初耳だぞ? 高校の時にだって話題に出たことすら無かったし。
きっと姉さんに似て、すげー可愛いんだろうな。五十嵐さんに振られたら、妹さんに乗り換えようかな? ダブルチャンスじゃないか!
「それじゃあ銀髪ちゃん、あたしの部屋ここと違って景観の良い上階だから一緒にいきましょ、エヘヘ」
「あっ、俺も行く」
「集塵くんは留守番に決まってるでしょ、女子の着替えを覗くつもり?」
「堂々と見ようかと……」
「銀髪ちゃん、こいつとは早く縁を切った方がいいわよ」
「……」
……考え込むなよ。
「なあ、集塵……このタイツの上に白シャツを着るのでは駄目なのか?」
「「それだっ!」」
「もー!! なんだったのよー!!」
――そうして俺たちはコンビニを目指した。
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