第二章   囚われの姫

帝国の軍隊

アレスの放った「魔法『銀の花の使命アイリス』」は、アレス以外のすべての物、空間を破壊した。


(—アレス、彼方はよくやってくれました―早くアレスに会いたい―)



光が消え、目を開くと、そこは闘技場だった。

「—ッ!」


フリューゲルが創り出した空間を破壊することができたが、

フリューゲルは自身の作った結界によって身を守っていた。


「いやー、あぶなかったですよ。まさかそんな力があったなんて…もう少し反応が遅かったら、今頃私の体は消滅していました。」


そう言ってフリューゲルは笑う。が、

「そんな余裕ぶってるけど大丈夫か?」


アレスはフリューゲルに気づかれぬように背後に回り込んでいた。

「剣技『騎士の一閃エクエス』ッッ!」


アレスの一閃は、フリューゲルの体に届いた。

「—ッ!や…やりますね…今日はここで撤退します…またいつか…」

「おい!待てよ!アイリスはどこにいる!!」

「それでは…また…」

そう言い残すとフリューゲルは空間を割り、消えていった。


「畜生ッ!仕留め損なった!」

アレスは悪態をつく。

愛する人の手がかりはつかめなかった。


「アレス!大丈夫!!体がボロボロだよ!!」

セレナがアレスの元に駆けつけてくれた。

「ごめん…魔法で体を癒してほしい…」

「分かったから!少し寝っ転がってて!!」


アレスは言われた通り寝転がろうとすると、軍隊の行進する音が聞こえた。

「まずい!アレス!早く逃げるんだ!」


アレスにそう言ってきたのはセレナの父、ニコラス・ルナーだった。

「お父さん!今アレスがそんなに動いたら大変なことになる!」


セレナは訳が分からないといった様子だ。

すると闘技場の門から軍隊がやってきた。


「あの軍隊は―帝国ッ!」

やってきた軍隊は全身黒の甲冑を着ており、ただならぬ気配を放っていた。

(なんだこいつらは…こいつら人間なのか…)


やってきた帝国の軍隊は、高圧的な態度だった。

「失礼する。ここにアレス・リアムという男はいるか?神への反逆行為を確認した。」

「「「—っ!」」」


セレナとニコラスはアレスの前に立つ。

「アレス・リアムという男は知らん。私が何者かと知っての狼藉か!?」

「知っているとも、ルナー家の当主にして三騎士トリニティガーディアンのニコラス・ルナー。そして、その隣の女がセレナ・ルナーだな?」

「そ、そうだけど!アレスって男に何の用なの?」

「言い訳をしようなどと浅はかなことはやめた方がいい。我々は全てを把握している。」


痺れを切らしたアレスは立ち上がる。

「だめ!逃げて!」

セレナの説得むなしく、アレスは帝国の軍隊に向かって歩く。

「貴様がアレス・リアムだな?」

「あぁ、俺がアレス・リアムだ。」


「「アレス!!」」

セレナとニコラスは同時に叫ぶ。

「俺に何の用だ?帝国?」

「言い方に気をつけろ。お前は、降臨された神へ反逆を行った。」

「そんなことしたつもりはないが?」

「お前の言い分は関係ない。」

「そもそも、ここは王国よ!あなた達がどうこう言う権利はないわ!」

「安心しろ、王への許可はもらっている。」


そう言って軍隊から一人が出てきて、紙を見せる。

そこにはアレスの投獄に関することが書かれてあった。

王国の印つきで。

「わかったな?これは、帝国を王国の意志だ。抵抗せずに拘束されろ。」

「俺は大事な人を探さなきゃいけないんでね、悪いけど断らせていただくよ。」

「魔法『常闇に沈めダークネビュラ』」


アレスは姿を消しセレナを抱え込み、逃げ出そうとする。

「それは我々への妨害行為とみなす。お前ら!やつを拘束しろ!」

「「「「はっ!!!!」」」」


帝国の軍は、一斉に怪しい銃を取り出しアレスが居そうな場所に向かって連射した。


(まずいまずいまずい!あの弾丸にはおそらく高位の麻痺が施されているな)


一つの弾丸がアレスの腕を貫く。

「—うっ」

「アレス!!しっかりして!!」


そのままアレスは倒れていく。

(ごめん…アイリ…ス…)


アレスは薄れゆく意識のなか、アイリスのことを想いながら。

意識を手放した。

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