決闘

「お父さん…」

「—っ!」


前に佇むセレナの父、ニコラス・ルナーは、流石は四大貴族の当主と言わんばかりのオーラを身にまとっていた。

(強いな…けど勝てない相手じゃない…)


「貴様、セレナに何をした…お前がセレナを攫ったのか?」

「違うよお父さんこの人は私の命の恩人なの―」

「貴様、セレナに洗脳魔法を掛けたのか!?セレナを誑し込むとはいい度胸じゃないか!」

(話を聞けよ!なかなか残念な頭をもっているな…残念というか親馬鹿ってやつか?)


「違いますよニコラスさん、セレナさんは森でゴブリンに襲われていたのを俺が助けたんです。」

「うるさい!セレナの言うことは聞いておらぬ!」

「えぇ……」


アレスは困惑するだけであった。


「セレナ!いいから家に戻ってこい!お前みたいなやつが冒険など早すぎるのだ!」

「—っ!そんなことない!私にはこのアレスって言う最強の騎士がいるから!」


「ほぉ…貴様、俺が何者かと知ってのことか?」

「いや知りません―」

「私は王国最強の騎士、三騎士トリニティガーディアンだぞ!」

(だ・か・ら・最後まで話を聞けよ!)

しかし良いことを聞いた。

「なるほどな…1000年後にもいるんだな…」


アレスの体から魔力が溢れ出す。

(こいつらの裏切りのせいでアイリスは…ッ!)


「貴様に決闘を申し込む。」

「ちょっと待ってよお父さ―」

「いいでしょう三騎士トリニティガーディアンのニコラス・ルナーッ!」


「ちょっと待ってよアレス!お父さんは頭がおかしいだけなの!!」

「ごめんセレナ。三騎士トリニティガーディアンに俺とアイリスは裏切られたんだ。正直今、頭が沸騰しそうなくらい俺は怒っている。」


「ふん!いい度胸だ小僧。俺がお前をボコボコにしてやろう。」

「そうですか。精々死なないように頑張ってください。」

「貴様ッッ!」



そうして近くの闘技場に向かったアレスたちは、決闘を行う。


「それにしても、たくさん観客がいますね…変な趣味だな」

「ふん!なんとでも言うがいい!貴様は今日、俺に殺されるのだからな!」

「それはこっちのセリフだよ…」


闘技場を見渡すとセレナがいた。

今にも泣きだしそうな顔をして必死に手を合わせて祈っていた。

(大丈夫さ…俺は負けないし、お父さんも殺しはしないよ。)


「それでは、三騎士トリニティガーディアンのニコラス・ルナー様とアレス様の試合を始めます!」


静寂が辺りを包む。

「始めッ!」


最初に仕掛けてきたのはニコラスだった。

「魔法『身体強化エンチャント』」

「なんだそのしょぼい『身体強化エンチャント』は?」

「負け惜しみはやめろ小僧。」

を見せてやるよ」


アレスは自分の魔力を開放した。

「—っ!」

「魔法『身体強化エンチャント』ッッ!」


ニコラスの十倍ほどの魔力がアレスを包み込む。

「化け物が…」


アレスは闘技場の地を蹴った。

瞬きをさせることなくニコラスとの距離をゼロにし、ニコラスの鳩尾みぞおちを蹴り上げる。

「—っ!!」


ニコラスの体は回転しながら闘技場の壁へと吹き飛んだ。


三騎士トリニティガーディアンも落ちぶれたな…1000年前の一割ほどしか実力がないじゃないか…」


吹き飛んだはずのニコラスは土煙の中から震える足でアレスに近づいてくる。

「貴様…いや、アレス。お前は強い。だが俺にはこの魔法があるッ!」


そういうとニコラスが己の魔力を高め魔法を詠唱する。

「かの者を燃やし尽くせ!」

「魔法『爆発火球エクスプロジオン』ッッ!」

(実力差がまだわからないのか…)


目の前で構築されている火球をみながらアレスも詠唱する。


「汝の魔法を無に帰る。常闇は晴れることなく無限に膨張する。」

アレスの魔力が銀と白と黒の三色から、完全な黒に変わる。

「魔法『昏天黒地ナハト・ホライゾン』ッッ!」


火球と無限に膨張する闇がぶつかる。

辺りには暴風が巻き起こり、観客達は悲鳴をあげた。


一瞬にも満たない拮抗は終わりを告げる。


アレスの放った魔法はニコラスの『爆発火球エクスプロジオン』を飲み込んだ。


「—何ッ!」


無限に膨張する昏天黒地ナハト・ホライゾンはニコラスをも飲み込んで爆発した。


「お父さんっ!」


土煙が闘技場一帯に広がった。


やがて土煙が晴れていくとそこには倒れこんでいるニコラスがいた。


「—ッ!しょ、勝者、アレス様!」


「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」


こうしてアレスとニコラスの決闘は幕を閉じた。


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