目覚め―②

アレスつま先に魔力を込め、体長3Mはあるゴブリンロードとの距離をゼロにした。


「—っ!」

セレナは自分の目を疑った。


なぜなら、ゴブリンロードとアレンの距離は50Mはあったはずだ。

それが一瞬にして距離を詰めたのだ。

アレスが発生させた風で周りの木々が靡く。


「こんなの…人間じゃないわ…」


気が付いたらアレスの剣がゴブリンロードの首を刎ねていた。


アレスは一瞬の内にゴブリンロードを倒してしまった。

この国の精鋭達が束にならないと勝てないと言われていたあのゴブリンロードを。


「大丈夫ですか?」

気付けばアレスはセレナの元まで戻ってきていた。


「強いんですね、アレスさんは。」

「そうなんですか?自分の力量がよくわかっていないんです。」


アレスたちが話していると...


―空が割れた。


「「—っ!」」


禍々しいほどの魔力が辺り一帯を包み込む。

割れた先から出てきたものにセレナは驚いた。


「あなたは魔族!どうしてこんなところに!」


現れたのは黒い翼に美形な顔をもつ魔族。

黒い翼がなければ魔族とは分からないほどだ。

「いやー初めまして。私の名前はアンドレア・ミロス。選ばれし7魔族ナンバーズの『記憶の追求者メモリー・パーソン』と呼ばれています。序列4位です。ここにアレス・リアムという方いませんか?」


(なぜ俺の名前を知っている…この魔族は俺のことを知っているのか?)

アンドレアの目的がなんなのか、アレスになにをするつもりなのか。

分からないことが多すぎたが、アレスは一か八かの賭けに出ることにした。


「あぁ、俺がアレス・リアムだ。俺になんの用だ?」


アレスは自分の魔力を開放した。空をも覆いつくすほどの魔力量だ。

アンドレアは額に大粒の汗を浮かべる。

「いやはや…まさかこれほどまでとは…。」


アンドレアを危険と見たセレナは叫ぶ。

「アレスに何の用!アレスに危害を加えるなら許さない!」


セレナは周囲に魔力の塊を数十個浮かべた。

アンドレアは面白い物を見つけた!と言わんばかりの顔になる。


「その魔力!あなたはあの女の妹ですね?」

「お姉ちゃんの事知ってるの?!今お姉ちゃんはどこにいるの?!」


セレナは落ち着きを無くした様子で尋ねる。

(なんで魔族がお姉ちゃんの事を知っているの?帝国に捕まったはずだけど…)

セレナは思考を加速させる。


「アレス・リアムをこちらに渡してくださるのならあの女に要はありません。

開放しますよ?」

「—っ!この屑が!!」


セレナは魔力の塊をアンドレアにぶつけた。


「かの者を氷の塊で穿ち尽くせ!」

「魔法『穿つ氷結の塊コンジェラシオン!!』」


「魔法『魔法相殺マジックカウンター』」


セレナが放った氷の塊はアンドレアに届くことはなかった。


「—っ!」

「いやー、いい魔法でしたね。けれどもそれじゃ私には届かない。」

「俺の事も忘れないでくれよ?」


アレスは自身の体に魔力を纏わせた。

銀、白、黒の三色の魔力は神々しさすら感じさせた。


「魔法『逢魔時タナトス—』」

辺りがアレスの魔力に覆われた。

まるでそれは昼から夜に変わったかのようだった。

「ここからは俺のターンだッ!」


「魔法『常闇に沈めダークネビュラ』ッッ!」


「—っ!」


アレスの体が消え、気づけばアンドレアの体にアレスの剣が突き刺さっていた。



アンドレアの腹部を貫いたアレスは語り掛ける。

「アンドレア、お前は俺の何を知っているんだ?」

アンドレアはアレスとの実力の差が絶対的なものと悟った。

「お…しえましょう…」


―刹那。アンドレアから魔法が放たれた。


「呼び起せ、記憶の深淵。今、過去をよ!」

「魔法『記憶開放ディメンシア』!!」


アレスはアンドレアの放った魔法により記憶の深淵を覗いたのであった。














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