文字だけで創られる小説の世界に色はありませんが、小説と云う媒体の持つこのような性質と、盲目の少女という取り合わせが技巧的で、かつ叙述トリック的なラストで結ばれる巧さには脱帽しました。
そればかりか、瑞々しい描写の数々は、如上のような文学的な暗闇の中にあってこそ尚のこと官能を擽って、私はこの闇の中で知れず剥き出しにされた自身の感性に思い当たり茫然自失するのです。
特に指を捕まえるところ。あそこは本当に好かった。。
情緒と技巧が一つの物語の中で余剰なく折り合うことは極めて稀です。とても立派な、確固とした作品だと思います。