りょうり
「……何作る?」
「うーん……」
所変わって調理スペース。キッチンと言えるほど豪華ではないけど、まぁそこまで小さい訳でもない。
そこで俺らは頭を抱えていた。
「じゃあパパっと作るか! と言ったものの2人で作れて時間をつぶせて朝食に程よいものが無いな」
「それな~ 朝からガッツリって気分でも無いし」
「あっ、そうだ!」
その時思いつく。小さな頃からの夢を。
「ちょうど材料もあるしさ、朝ごはん作らね?」
「いや、今その話してたじゃん。お湧きしていられるの?」
「丁寧に罵るな。 いや、あれだよ。『典型的な朝ごはん』ってやつ。昔から1回やってみたかったんよね」
「あー、分かる! 味噌汁ご飯、魚に1品ね!いいね、丁度よさげ!」
「あっ、正道なら鮭だけど今うちに鯖しかないからそれでいいよな?」
「鯖好き!」
「だよな。じゃあ始めっか!」
ということでメニューが決まった。
俺はエプロンを装備し、冷蔵庫を探りながら横を見る。
「その服可愛いし汚したくないだろ? カナ隊員はご飯と1品を頼む」
「りょかい! エプロン所持男には魚と味噌汁をお願い致そう」
「っし、やるか! 冷凍庫にはあまりのご飯があります。食料庫にはパックのご飯があります。お好みの方でよろ!」
声を掛けるとカナは冷蔵庫の方にやってきた。
ふむ、冷凍ご飯派閥か。
っと。
「ごめん、今どく」
「いいよそのままで。っと、これかな?」
冷蔵庫を漁る俺とカナの体が重なる。
やばい、いい匂いがする。
目前にチラつく薄黄から視線を外し、冷蔵庫から魚を引っ張り出す。
「鯖ゲットー。俺偉すぎん? 何故2匹入りを買っていたのでしょう」
「はいっ! 私がこないだ次回のツマミに鯖を希望したからです!」
「ざっつらい」
軽い会話でも、やっぱり心臓がドキドキする。
「あっ、チンゲン菜あるじゃん。1品決定ですな」
「おっ、こないだ作ってくれたあれ?」
「うんうん。ヨータ好きって言ってたでしょ? これは作るしかないね」
1年前くらいに少し話しただけのハズなのに、小さな一言を覚えていてくれて嬉しい。
そこからは作業の始まりだ。
「ごめん、味噌汁の野菜切ってもらっていい?」
「おっけー、もう少しでチンゲン菜終わるから置いといて!」
「うぃ」
会話を交わしながら、横に立ち一緒に作業する。
多分これが普通というものだ。でもここまで来ると特別で、とても幸せを感じて。
「見てこれ! 綺麗すぎない!?」
「やべぇな。型抜きないのに」
見せびらかしてくるハート型の人参に感じるあどけなさが可愛い。
「あっ、味噌汁湧きそう!」
「やべっ、ありがと!」
「どういたしまして~」
そうして数十分。
「……完成? 完成!!」
「っし、食べるか!」
皿を用意し、焼いた鯖やご飯を取り分ける。
「お待ちかね! 醤油を垂らして……」
「っしゃ! この菜っ葉めっちゃうまいんだよなこれ……」
席につき、対面して皿を並べ。
真正面から見る一段落後の落ち着いた顔がとても可愛い。
「「いっただきます!」」
揃った声と手が、幸せな朝食を運んできた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます