第10話
「私は知っていた。人ではないあれの存在を」
そう言って、蓮宮は話を続けた。
蓮宮は九条の部屋を見るために、向かいの雑居ビルの屋上へ上がった。双眼鏡で九条の部屋を見ると、そのベランダに銀髪の少女がいた。風に
「ひゃっ!」
蓮宮は驚いて、尻もちをついた。そこには、あの銀髪の少女が立っていたのだ。冷たい無表情で蓮宮を見下ろす少女。
「だめだ!」
向かいのマンションから男の声が響いた。蓮宮はその声に振り向くと、九条がこちらを向いていた。すぐに少女へ振り返ると、もうそこにはいなかった。
「あれは、私を認知している。でも、それで狙われているとは思わないわ。あれはきっと、九条を探しているのよ」
蓮宮は語りを終えてそう言った。
「そうかもしれないな」
五十嵐はそれを受け流し、何やら考えている。
「九条の警備は大丈夫か?」
「ええ。岡崎さんたちがついています。何の連絡もないので大丈夫だと思います」
「今から行くぞ」
榊原の報告を聞くと、五十嵐は怪訝な表情で言った。
九条が入院している市立病院では、五人の刑事が見張りをしていたが、全員、首から血を流し倒れていた。
五十嵐は榊原、須藤、その他三人の刑事とアイコンタクトで状況を確認し、一斉に九条の病室に突入し、銃を構えた。その時、ちょうど、銀髪の少女が九条を肩に担ぎ、窓から飛び降りようとしていた。
「動くな!」
銀髪の少女は、五十嵐の声に振り返ったが、止まることはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます