第13話 趣味

今日からまた、私は王城に通うようになっていた。

ダモニア様と関わることによってさらに何か情報を得られるかもしれないからだ。

それに、王宮書庫ではかなり大きな情報を得られたが、未だにすべての書物を読み切ったわけではない。

もっと多くの書物があり、その中にはさらに多くの情報が記されているはずだ。


ということで、私はお父様に近況を報告する日以外はほとんどの場合王城に訪れようと思っている。

先日、大方これからの計画は立てることが出来た。

〝城塞〟の権能覚醒者、そして他の記録にない魔属性の権能覚醒者を探すのは、大変なことだろう。

記録に載っていないため、その具体的な数だってわかっていないのだ。

ダモニア様の情報、つまりは王国が持っている中でも、かなり信憑性の高い情報であっても分からないような情報だ。私が手に入れられるとは思えない。

因みに、私が読んだ書物は、王国で最も重要な情報ではない。

王宮書庫に保管されている書物とは別に、王族禁書庫という場所に保管されている禁書がある。

その禁書にも、いくつかは魔属性の権能についての情報が書かれた禁書があったらしい。

しかし、それらは存在こそ記録されているけれど、禁書自体はないらしい。

また、その禁書があった記録さえ改竄されようとしていたため、何らかの理由で存在を隠されようとしたと考えられている。

ダモニア様が、その存在の記録がある最も古い時代を考慮すると、その禁書があったのはマルティアル王国が建国されたころという、とても昔のことであることが分かる、と言っておられた。

いや、本当ならばそういうことを部外者に言ってはいけないような気もするのだが、まあ、ダモニア様が勝手に教えてきただけなので、いいだろう。

つまり、マルティアル王国が建国されたころ、魔属性についての情報が多くあったのに、何者かがその情報を隠そうとしたのだ。

昔のことということもあって、誰がその情報を隠そうとしたのかや、その情報にはどんなものが含まれていたのかなどは一切わからない。それで、今ではそれらの情報はマルティアル王国の王家の謎となっているのだ。

私としては、その謎を解くことで何らかの利益を得られるとかではないのだが、その謎には興味を持ってしまった。これは、私の好奇心だ。

近頃は、ダモニア様からその謎についての情報もできるだけ探ろうとしている。




「チトリス、今日は何を調べに来たんだ?」

私は、ダモニア様の執務室に訪れていた。

ここ数日、何度もダモニア様に会いに来ているのだが、その過程で分かったことがある。

ダモニア様は、大体の場合、いつも暇だ。

実際、王子としての執務をしているのを見たことがない。

物語などで、こういう暇人は本当は裏でとんでもない仕事量をこなしていて、人からは暇人だと考えられている、という場合が多いが、ダモニア様の場合は本当にそうでなく、暇らしい。

何やら、二人の王子から仕事をもらえないというのだ。

前からずっと無能だと考えられていたダモニア様だから、そもそも仕事が回ってこないらしい。

そのことが分かってからは、私はよくダモニア様と雑談するようになった。

ダモニア様が忙しく、時間がないからと今まで無駄な時間は取らないようにしてきたが、時間がある程度あるのならば、そういう無駄な時間だって必要だろう。

特に、ダモニア様の場合はかしこまった話を続けること自体が苦痛のようで、集中力が数時間続いた試しがない。

それで、一回会うたびに、三十分程は雑談をしている。

ある時は、前聞くことが出来なかったダモニア様の剣のコレクションについて話した。

ある時は、魔属性の権能ではなく、普通の魔術についての話もした。

ダモニア様は王家ということもあって、魔術に関する知識はすごかったし、魔術に関する情熱もすごかった。


そして、今日の雑談の話題は、近頃の趣味についてだった。


「ダモニア様は、近頃何か興味を持っているとか、そういうのはございませんの?」

ダモニア様と言えば剣のイメージがあるが、それ以外に好きなものとかはないのだろうか。

私は、少し気になっていた。

何しろ、ダモニア様が剣以外に興味を持っているところを見たことがない。

まあ、魔属性の権能関連で興味を持っているのを見たことはあるが、個人的な趣味――剣に関するもの以外で――があるとは聞いたことがない。


「そうだな、私は近頃恋愛小説をよく読んでいるが、そういうのが趣味ということか?」

私は、危うく飲もうとしていた紅茶をこぼしそうになってしまった。

ダモニア様はなんとおっしゃられたのだ?

まさか、とは思うが〝恋愛小説〟なんて単語聞こえたはずがないですよね?


「あ、すいません、もう一度だけ言っていただいてもいいですか?」

「ああ、恋愛小説だ。」

聞き間違えではないの!?


――――――――――――――――――――――

あとがき

――――――――――――――――――――――

投降が遅れてすいません。完全に忘れていました。


先日、切裂の王子編については完結しましたが、このお話からはサブストーリーがありますので、ぜひ読んでください。


書き溜めていたものが無くなってきてしまったので、一旦投稿をお休みさせていただきます。大体二、三週間ほどだと考えています。

何かとご迷惑をおかけして申し訳ありません。

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殺すしか能がない権能を有効活用したい! 村右衛門 @manngou

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