35回(実質31回)今更腰が引ける新作執筆前夜
私は、新作は基本的に「手元で完結してから、1話ずつ切り分けして、公開する」というスタイルをとっています。
これをする理由は、たとえ作品がヒットしなくてもモチベーションが保たずにエタるような事態をさけるためです。
そのため、ある意味伸るか反るかで毎度書いています。
そして書くたびに感じるのは、実際に原稿を書き始めるまでの準備を含めて、「長旅に似ている」ということです。
事前に入念に持ち物を準備し、巡るロケーションの予定を立てて、いざ出発。
しかし天候や良くも悪くも予期せぬ事態や、想定外の出来事の発生。
致命的な忘れ物とそれを取り繕う現地調達。行き詰まった時の絶望感、現地での親切な出会いによる事態の収拾。
そうしたことが書くたびにあるのです。
今は数ヶ月掛けて新作という旅のための「旅行カバンを詰め終えつつある」段階です。
そこでちょっとした問題が増えました。
旅行で例えるなら「南の島に行こうと思っていたら大型台風が勢力を拡大しながら接近しているという報が入った」くらいの出来事です。
今回はそれに関する話をしようと思います。
唐突ですがXの「とらんす少女ちゃん」というアカウントをご存知でしょうか。
MtF(最近はAMABと言い換えられるようになりつつあります……“assigned male at birth”の略で「出生時割り当てられた性が男性」という意味で、いわゆるXジェンダー、ノンバイナリの方も包摂した言葉)当事者であることを開示なさってる個人の方なのですが、
この方、マンガをpixivに公開していて、現代を生きる若いトランス当事者の物語として非常に解像度の高い作品を何本も描かれています。
ごく最近、彼女は小規模出版社を通じて自作出版のクラウドファンディングを立ち上げました。
私は、その紹介拡散ポストを通じて、ほんの3日前に彼女の存在を知りました。
そしてpixivにある作品を、今のところ『高校受験編』以外のすべてを読んだのですが……
「日本の若齢トランスジェンダーを題材とした作品で、現状これの右に出るものはいないのではないか」と思うほどの出来でした。
特に思春期におけるAMABトランス当事者としての苦悩やそれを取り巻く境遇というのは、私が『しーちゃんのスカート』や『入学式は双子コーデで』を書くにあたって迂回したモチーフです。
なぜならその詳細な内面を想像するだけで苦しく、そして的はずれな「門外漢の妄想」に成り下がってしまうことを恐れたからです。
とらんす少女ちゃんさんが真っ向から描いているモチーフが、まさにその「当事者の内面の苦痛」や「当事者間の交流」でした。
私は物書きとしての持病のようなものとして『なにか優れた作品を読んだら、同ジャンルを書く場合、最低でもその作品を水準に自作を作る』という義務感を抱く傾向がありまして……。
カクヨムコンを視野に入れた次回作執筆をそろそろ始めようかと思っていたところでこの作品に遭遇したのは、ある意味で非常に意義深い一方で、完全に震え上がってます。
実をいうと、とらんす少女ちゃんさんの一連の作品群に触れる以前の段階で、軽く腰が引けていました。
というのも、プロレス関連の知識や情報という意味で最近、元WWE・元全日本プロレス、現九州プロレス所属のTAJIRI氏の著作を読んだのです。
TAJIRI氏は文才堪能な方でもあり、そこでやはり「餅は餅屋」というか、『解像度において当事者著作にまさるものはない』という感覚を深めていた矢先の遭遇でした。
先述の通り「名作に出会ったらその作品を、水準に書く」という自己への呪縛、「私が書けなかったもの、そして今後も書き切ることは不可能であろうものを高解像度で描かれた作品との遭遇」の板挟みに陥っています。
押しやりながら引き付けられる、さしずめコブラツイストで肋骨ギシギシ折られてるような状態です。
「それでも書かねばならないのが小説書き」と自分を奮い立たせつつ、ちまちました情報を集めつつ、ルーティーンのアニメや動画視聴などで正気を保ちつつ、作品執筆の準備を続けているのが昨今の現状です。
そういうわけで、現在メンタルが軽くやられてるから、というわけではないのですが、
今回はアニメ、プロレス関連の感想はちょっとお休みします。
見れていないわけではないですし、終盤に来ていい作品だと思えるようになった作品とかいろいろあるのですが、朝ドラの『虎に翼』を筆頭に最終回ラッシュを迎える9月最終週を目前にして、すべてまとめて列挙できる精神的余裕がありません。
その一方で、『仮面ライダーガヴ』とか『ベイビーわるきゅーれエブリデイ』とか9月に入って見始めた実写・特撮作品もあったり、10月以降見るアニメのリストがまとまってなかったり、
短文でも感想戦をしている余裕がないのです。
そんなわけで、ご容赦ください。
プロレス関連も本当は「九州プロレス」という南の楽園みたいなプロレス団体の話もしたいんですけどね……。(「現地観戦無料で、観客の半分が子供」という観客の高齢化・ニッチなマニア向け化が問題になりつつある都内のインディー団体の真逆のような明るい未来しかない団体なのです)
そういうわけで、今回はこの辺にしたいと思います。
(来月頭あたりに、精神的に持ち直していたら、まとめて感想戦は(余裕があったら)やりたいとは思ってはいます)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます