34回目(実質30回)2つの作品の裏話とある復帰待ちレスラーの話。

 ども、お暑うございます。いかがお過ごしでしょうか。

 先日エアコンが故障して買い替えるか修理で済ませるか結構悩んだ我が家でございます。(結果「今回は修理、次故障したら買い替え」に落ち着きました)


 さて本題。今回は3本立てなので長いです。覚悟してください。


 まず先月終盤『第1回黒歴史放出祭』の結果が発表されました。そしておかげさまで拙作の『本日、愛犬没する』が最終選考まで残りました。これの裏話から始めます。


 あれを書いたのは本当に発作的な事でした。書き上げてアップロードした赤っ恥むき出しの「年月を重ねることで徐々に黒くなっていく黒歴史」そのもの。


 つまり全く計算してなかったのですが、後からよくよく考えたら「このネタは伊集院氏狙い撃ちのモチーフだったなぁ」などと気づくところがあったのでそれについて触れたいと思います。


 私、数年前まで伊集院光氏の深夜ラジオのリスナーでした。まだ構成作家が長年勤めてた通称『渡辺くん』という方だった頃ですね。午前中に同局帯番組で「伊集院光とらじおと」とかやっていた頃です。


 その頃に、伊集院光氏が御夫婦で犬を二匹飼っており、それを一匹亡くした翌年にもう一匹も亡くなった、という話をされたことがありました。

(話したというより、番組の最後にいきなり報告した、という方が正確かもしれません。笑いのネタにならない自分の話を極力持ち込まないプロらしい伝え方だなと凄みを感じたと共に、心からその痛みを共感したのを覚えています)


 ペットロスと伊集院氏につきましては「らじおと」で共演なさってる柴田理恵さんが先輩にいまして、「犬が出てくるホラー映画で、(全く泣く場面ではないのに)亡くなった愛犬に似た犬が出てきたことにグッときて号泣した」などの話をちょくちょくなさっていたように記憶しています。

 

 そういう方なので「犬を二匹飼っていて、その二匹目を失った日の話」というだけで伊集院氏の琴線に触れる要素はあったんじゃないかな、というシロモノでした。

(ただ、読み物としては言うまでもなく未熟でした。実際に伊集院賞を受賞なさった作品の方が圧倒的に良かったのは言うまでもありません。)



 続きまして、今連載中の『習作 恋愛離婚旅行』の話。

 タイトルに『習作』と置いたのは、久々の執筆作品であるというリハビリ的な意味であると同時に、2つの挑戦を試みた作品だからです。


 一つは複数愛ポリアモリーを主題とすること。

 もう一つは、明確な『生理に関する描写』をすることでした。


 前者はともかく、後者については私にとって長年の課題であり、壁でした。


 小説を書き続ける中で抱え続けてきたジレンマとして、

「作中の女性の月経をどう扱うか。そのあたりが都合よく不可視化された創作物上の女性たちにリアリティはあるのか(また逆に少女性を象徴する表象としての『初潮』の扱われ方は、ある種のステレオタイプな少女崇拝的な表現ではないか、など)」

 というものをもっていました。


 現在でこそ、生理痛であったり生理前症候群いわゆるPMSなどについて公に情報交換がされるようになり、生理のない身であっても、ある程度理解の解像度を高めることができるようになりました。

 それ以前からずっと抱いてきたもの、と思ってください。


 実をいうと『しーちゃんのスカート』を書くきっかけとなったのも

「そこまで思い悩むならいっそのこと月経が存在しない体質の女性を主軸に話を回す物語を作ればいいじゃないか」

 と思い至ったのがきっかけだったりします。


 そこからトランス女性について調べ、その複雑な境遇、差別、成長に伴う苦痛と女性らしさを獲得するための隠れたトレーニングに満ちた人生のロードマップを目の当たりにしました。


 その中で思ったのは、

「これをそのまま書くのは、読むのに苦痛が伴う上、下手をすると偏見を読者に塗布する話になってしまうおそれがある。そしてそれ以上に、書き手である私自身の無知が怖い」

 というものでした。


 そしてなにより、

「トランス女性のサバイバルストーリーをフィクションで書くくらいなら、当事者の語りを集めた海外の書籍の翻訳本や、ノンフィクションを読んだほうが正しい知識と理解を得られるのではないか、実話以上に説得力のあるものもないし」とも思いました。


 そういう中で見出したのが、「二次性徴以降の苦痛や課題や個人差に直面する以前」、つまり「児童期の物語にする」というのが落とし所でした。

 そのようにして書いたのが『しースカ』です。


 それこそ、立場こそ違いますが『生理がある人』という言い回しを揶揄することでトランス男性やノンバイナリーの方を中傷したJKローリングと「発想の出発点」は同じなわけです。

(そういう意味で、私は「彼女のことを罵る資格はない」と自覚しつつも、

「無知の自覚から理解のアップデートを試みるどころか、反トランスの差別主義者の代表格としてあぐらをかいている彼女のようにはなりたくはない」

 と強く思うところではあります)


 実際書いてみた実感としては……まだ若干の不安があります。

 ですが慢心して適当に書くようになるより、敢えて不安な感覚を残して、逐次資料収集をし、アップデートしながら書いたほうが良いような気もしています。(このあたりはトランスに限らず、作者自身とは異なる属性や特性を有するキャラクターを執筆するときと同様ですかね)


 あとは「生理用品の進化ってすごいんだな」というおどろきがありました。

 もちろんヨーロッパを舞台にするのであればビデなどが古くからあることは知っていました。

 しかしそれらとは別に、実際に女性が社会進出するに伴って家の外で長時間連日活動するために必要なツールとして進化や発明されてきた経緯が沿っていることに、歴史の深みを感じずには居られませんでした。


 そして、それに対して付加価値税的な標準税率(10%)を定めている現代日本の消費税……

 とも思ったり。

 もっとも、トイレットペーパーや紙おむつも10%なので

『逆になぜ新聞だけ8%!? 新聞紙でケツを拭えと!?』

 という話なのですが。

 


 さて、今回の3つ目の話題。


 性別適合手術のため長期休養に入っていたトランス女性のプロレスラーが、また来月復帰予定です。


 PPPプロレスという団体に所属するエチカ・ミヤビ選手です。

 PPPプロレスは男女混合の団体、なのですが、比較的新興のインディー団体であり、かなり派手、というか「パリピみが強すぎる」という理由で避けてきた団体でした。


 彼女がどういう経緯でレスラーになったのかは、集英社オンラインのスポーツ欄にインタビューが出ていたり、過去のnunberオンラインなどにインタビューがあるのでそちらを追っていただけると下手に説明するより明確かな、と思います。


 ただ一つ言えるのは、veny選手同様、彼女も男子としてそれなりにスポーツエリートでありつつも、性自認が身体の性別と一致していなかった、という経緯を持つ方です。


 veny選手がはじめから女子プロレスを目指して男子レスリングで素養を育んできました。


 それに対して、エチカ・ミヤビ選手は自身の「生まれつきあてがわれた性別」に自身を適合させようと思春期にソフトボールや野球を通して努力していた人です。

 しかしそれが上手くゆかず、しかし生活環境的に性自認に忠実に生きることも出来ないまま大学進学、コロナ禍を迎えました。

 その中で自分と向き合い、youtubeなどでMtFなどに関する知識を得ることでようやく自身の性自認に沿って生きることを獲得した人です。


 彼女はデビュー戦で性別適合手術前の段階で世羅りさ選手というデビュー10年長の中堅女子プロレスラーに負けています。

 そして今年1月から性別適合手術のために長期休養に入っていました。


 そもそもトランスジェンダーの方、というのはスポーツから遠ざけられやすい傾向にあると、最近読んだ資料で知りました。

 いわゆるプールの水着が性自認と一致していない問題などです。

(最近の小中学校向けの水着は男女共通のデザインのものが一般化してきており、このあたりは徐々に是正されているというのはあります)

 他にもジムの更衣室やグループプログラムが男女で分けられているなどで、トイレ問題と同様に使用しづらいという背景があります。

 またトランス当事者の割合自体がノンバイナリを含めて1000人に1人か2人程度とはっきりくっきりとマイノリティであり、トランス当事者にターゲットを絞った店舗展開といったものも、運営側は行いにくいというのがあったりします。

 

 そんな感じなので、プロスポーツとしてのプロレスはやはり寛容な文化なのだなぁなどと思ったりしました。


 さてそんな感じでいつものを短めに。

 アニメ感想

・逃げ若……時代物だから仕方ないと理解はしつつも、犬が弓の的になるのはやっぱりちょっと……。

・異世界スースク……7話目に来てようやくスースクらしくなってきたな、という感じ。

・ニンジャカムイ……急にハイテクスーツバトル物になって戸惑ってます。忍べよ、忍者。

・しかのこ……特に何も考えずに見ています。むしろ考えたら負けくらいのギャグ。

・ATRI……ポストアポカリプス日常モノとしては、少々ご都合主義とお涙頂戴が行き来してるかな、といった感じ

・デリコズ・ナーサリー……新規で見始めました。女性向けっぽい作風なのですがキャラデザの繊細さと「男だらけで未就学児を子育てする」という設定が興味深くて見てます。


今回は長くなったのでプロレス界隈の話はガトムのみで。

・月末にガトムの後楽園が控えており、同団体は小学生の新人、広海カホがデビューします。小学生デビューの女子プロレスラーは怪我さえしなければ結構いい選手に育つ傾向が強いので期待してます。


以上、だいたいそんな感じでしょうか。

それでは~また、来月位に~。

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