9回(実質7回)萎縮と恐縮と変動。

 今回は安倍元首相暗殺に伴う日本の闇の暴露とそれに伴う萎縮、の話。


 ……すごい、文字にするとめっちゃ胡散臭い。(待て)


 いや何の話かというと、犯人の人間像の明確化と並行して、近頃SNSで『オカルト(現実)』とでもいうべき『霊感商法被害』や『霊感系加害者・宗教団体と政治家・政党の繋がり』みたいな話が多く流れてくるようになったんですよ。

 そういう界隈の「素人が手を出すと取り込まれるので専門家経由で情報を得るべし」というタイプの情報が『専門の観察者』によるツイートでボコボコとバズってるのを見ていて、割と強く思うところがあるんです。


 それは

「オカルト寄りの現代ファンタジー(霊とか悪魔とか呪い)、しばらく書けないかもな」

 という書き手としての萎縮です。


 『小説以外の話をする』というこのエッセイのコンセプトがガラガラと崩れる音がする気がしますが、毎度のことです。続けます。

 ……このエッセイを書くようになって「小説以外のことを考えていても無意識レベルで小説に活かすことを考えている。そういう思考回路の人間なのだな」と自覚するようになりました。


 近況ノートにも書きましたが実は近頃、一行も書けない日が続いております。

 ここ数日は「仕方ないからしばらく別の作品書いて、また書く気になったら戻ってこよう」と頭を切り替えてネタ出しに取り掛かっています。

 思いついたネタを書き出してみたところ……どうやら、今は書かない方が良さげなネタばかり思いつくのです。

 例えばこんな感じ。


・普通のオカルト(霊とか悪魔とかが見える系の話)……これは没。

・精神疾患・認知能力や脳機能に難のある「信用できない語り手」・一般的だけど完治が意外と難しい(例:アトピー性皮膚炎)病気とファンタジーみたいな話。……これらは典型的なほど心霊商法のカモにされてる界隈なので、軽々しくファンタジーと混ぜてはいけない。

・マンガ『ハンターハンター』の水見法みたいな身近なもので超能力系の要素……これも現実でやるとカルト宗教のパフォーマンスに類似するのでNG。


 ……率直に言いまして、拙作『巻島元廣桜塚』も「今の状況で書けるか」といったらちょっとヒヤヒヤするレベルです。


 考えすぎじゃない? と思うかもしれませんが、個人的に身近な経験としてはそうでもないのです。

 私は過去に未治療の統合失調症の患者と一定期間生活したことがありまして、その時期の患者自身の言動と直接対峙した経験から、「悪魔/悪霊を退治するため、お祓いに行く」とか「最近霊が見える」というフレーズをリアルで聞いたらパリッと緊張感が走り、とりあえず精神科の受診を勧める癖があります。

 そして精神的身体的に弱ってる人に付け入ってくるのが心霊商法です。


 更に、心霊商法のマインドに利用されがちなのがオカルト/現代ファンタジー系フィクション。

(個人的には、オカルトバトルのフィクション大好物なんですけどね……『GS美神極楽大作戦(昔のマンガ)』とか『スーパーナチュラル(少し前に完結した海外ドラマシリーズ)』とか)


 そのあたりを自覚していると、書くに書けませんし、いざ書くとなれば細心の注意と結構な覚悟が要ります。いずれにせよ、気軽に書くと火傷しかねない。

 そんな気持ちから思いついては自分でボツにする。

 そういう「ネタ殺し」の日々です。


 まあ、今回の経験で断片的にですが理解できるようになったものもあります。例えば「ポリコレ嫌い」の価値観です。

 私は「当事者の視点や価値観を可能な限り理解し、消化吸収した上で作品作りに活かせばいいのに」と思って来ました。それができないことが不思議でなりませんでした。

 できない一因として私にとっての『オカルトバトルもの』の固定概念のように「自身の価値観が規定した『型』に適合できない」という、

『ゲームMOD(PCゲームにおける改造データ、主にゲームのデータ上の余白に差し込む形で新たな要素を追加するもの)導入における機能衝突』

 のようなジレンマが発生しているのだな、と。


 ……そんなわけで、いよいよ女子プロレスの小説を書くしかない世界線に踏み入りつつあるわけですが、

 まあ、これにとりかかって私はスランプに突入いたしました。

 ここで書けなくなっている経緯に触れます。


 一つは『誰でも女子プロレス(通称:ダレジョ)』という我闘雲舞の主催しているプロレスワークショップの配信を見るようになったことです。

 このワークショップは参加者を女性に限定して行われているものですが、情報公開として数ヶ月前から、開催内容の映像配信を始めてくれています。


 ダレジョはプロレスの初期トレーニングを知る上で非常に有益でした。その一方で、見るほどにプロレスを所作や挙動のレベルで細密に捉えるようになってしまいました。

 そして、それを活字として描写することに不安を感じるようになりました。


 小説は専門雑誌の試合リポートのように技名と展開を流れるように書いて、あとは読者の知識と想像力に任せればいいものではありません。「プロレスを知らない人が読む」ことも想定して書かねばならない。

 それこそ、マンガのように明解に挙動を描写する必要があります。

 その描写精度の必要性への意識が高まるにつれて、自分の無知や理解度の低さ、無知を自覚する、といったことに繋がりました。


 書こうと思った対象について持ち合わせる情報量の少なさに気づく、これほどに筆が鈍るものはありません。

 以前書いたルル・ペンシルに次ぐ新たな壁です。

 この壁を前にして心折れかけている、というのが現状です。


……なんか今回ネガティブなことしか書いてませんね。


 最後に少し明るいプロレスの話を書きましょうか。


 7月の第2週の週末、DDTや東京女子プロレスといったサイバーファイト系の団体主催のプロレス興行において、試験的に声出し応援と紙テープ投げが解禁されました。

 これはコロナ禍に入って以来、断たれていた慣習の復元であり、2020年の春以降にデビューした若手選手達にとっては初めての体験になります。


 元々会場ごとにローカルルールはあるものの、基本的には規定制限である収容席数の50%以下であれば、声出し応援は許可されていました。

 それを感染対策の観点からこれまで各団体自粛していたのです。


 また、東京女子においてはAEWの現女子王者サンダー・ロサ、里歩などを招いての開催となり、この大会の試合で山下実優選手のAEWでの女子王者挑戦権を獲得。

 伊藤麻希が英国EVE所属のアレックス・ウィンザーに負けてベルトを海外流出するというような事がありました。

 これに限らず、この夏には東京女子から海外団体の試合に参戦する選手が居ます。

(現状、渡米・渡英よりも日本への帰国の方が手続きの方が複雑で大変なくらいだとも聞きます)


 プロレスを取り巻く状況はこの3ヶ月で大きく変動を見せています。

 一方でコロナ感染者数の再増加が始まっており、こちらの影響の度合いにもよりますが、コロナ禍におけるプロレスの様式は(完全にコロナ以前に戻ることはないにしても)再び変わるかもしれません。

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