8回(実質6回)AEWという理想郷。

 なんでも6月はプライド月間だそうで。

 カクヨムもそれっぽい自主企画があってもよさそうなものですが、案外ないもんですね、と遠巻きに思いながらこの文章を書いています。

 その一方で、今回はプライド月間を嘲笑うような話も目にしております。

 今回は、その怒りから来る「書き殴り」でもあるかもしれません。


 その怒りの根源というのが、これ。

『国際水連、トランスジェンダー選手の女子競技への出場を禁止』

https://www.bbc.com/japanese/61862354

 BBCの日本語版ページより。


 私が特にムカッと来たのは次の2点です。


 その1

 『新方針に関する34ページの文書は、男性から女性になったトランスジェンダーの選手でも、「タナー段階2(身体的発育が始まる時期)以降の男性の思春期をまったく経験していないか、12歳前の、どちらかであれば」、女子のカテゴリーへの出場資格があるとしている。』(原文ママ)


 ……タナー段階2というのは二次性徴を5段階にわけた中の2段目です。

 生まれた直後の状態が1、成長完了が5です。

 その中の段階2は平たく言えば陰毛が生え始めたくらいです。

 そして『二次性徴抑制療法』という日本国内で現状15才未満が受けられるトランスジェンダーの身体医療の基準がこのタナー段階2を迎えていること、だったりします。(つまり、タナー段階1の時点で止めることは出来ない処方)

(15才未満でこれを受けるのすら、GIDの関連学会に担当医が連名で署名した書類を提出すること、とされるという、かなり慎重さを求められる措置です)

 しかも国内の現行のガイドラインでは二次性徴抑制療法の治療期間は2年を目処としており、不可逆療法である性ホルモン療法を受けられる最低限の年齢(15才)から逆算すると、13才からの処方が最長になります。

 つまり、要するに「無理ゲー」なわけです。


 その2

 イギリス元五輪代表女子水泳選手のシャロン・デイヴィス(トランス女性排除派)の発言。

 ……内容の引用はしません、不快なので。

 先述のURL先にありますのでお読みいただければと思います。

 私の率直な感想は、


「体重も身長も階級の制限がないのが水泳競技。なんなら『骨密度が高い』『社会格差的にアフリカ系は水泳競技と縁遠い』という点でアフリカ系選手が不利な競技ですらある。そんな潜在的差別の存在する競技の選手の立場でそれを言うのか」


 です。

 拙作『生産性もしくは25メートルについて』でプールとアフリカ系の少女を題材にした最大の理由がここにある、と言っても過言ではない感じの怒りです。


 さてこの流れで書くのもいささか奇妙な話ですが、

「じゃあ、いつも熱心に書いてる女子プロレス界隈はどうなの?」

 という話をしたいと思います。

 女子プロレス界隈にトランスジェンダーは、存在します。

 これは現状、3パターン確認されています。


 ・引退後性自認が男性であることを自覚して性別適合をした元女性レスラー。

 ……選手時代のリングネームは花月、現在は石野結という名義でyoutube等で活動をなさってます。


 ・現役で出生時男性、現在女性レスラーとして活躍されている方。

 ……アメリカのAEW所属のナイラ・ローズという選手です。

 AEWという団体は民主党的と表現されるほどに性的多様性を容認している団体。

 彼女がリングに上った当初、彼女に罵声を浴びせられたことがありました。その際団体は、罵声を浴びせた観客を出入り禁止にしていたりします。


 ・男性選手相手にシングルマッチも、女性選手相手のシングルマッチも、男女混合タッグもある選手。

 ……朱崇花あすかという日本人選手です。

 彼女は元々トランス女性としての性自認があり、女子プロレスに憧れる子供時代を送っていたそうです。

 そして女子プロレスラーになるために、ということで中学時代は男子選手の枠でアマレス競技に打ち込み、全国3位まで行きました。

 その後、高校1年時、性別適合のための治療を開始。(このときアマレスのスポーツ推薦で高校に入っていたため、退学したそうです)

 性別適合を開始すると同時に、女子プロレス団体WAVEに入門、プロレスの指導を受け始めました。

 現在はフリーとしてDDTを中心に、各女子プロレス団体に招かれて参戦しています。

 本人は国内でのトランスの認知度やわかりやすさに配慮して「ジェンダーレス・レスラー」という呼称を使っていますが、いわゆる英語圏での性自認における二人称問題(she/he/they)においては「she(つまり女性)」とされることを望んでいるそうです。

 また、海外ではアスカという名前の日本人選手は既に居るため、Venyという名前で参戦しています。


 ……アメリカのAEWにはこれとは別に、男子の枠で活躍なさってる方でジェンダーフルイド(流動的な性)のソニー・キス選手(出生時は男性)という方が居ます。


 私が女子プロレスに惹かれる理由の一つが、こういう「性の多様性について受容する力が強い」というのもあるんだよな、とまじまじと感じています。

 そもそも体重95キロの選手と体重55キロの選手が同じリングで闘うのが女子プロレスです。

 以前にも書いたかもしれませんが、男子のプロレスの場合、ジュニアヘビー(100kg以下)とヘビー(100kg以上)という階級がありますが、

 女子の場合は「未成年」と「大人」くらいしか明確な差はありません。

 その差ですら「カンチョーやはずかし固めなどの特定の技を未成年には使用しない」というようなコンプライアンス的な配慮であって身体的な区別ではありません。

 

 概ね、今回の記事はこんなところでしょうか。

 暑くなってきました。エアコンをいつ入れるかの我慢大会をしてる感じです。


 そして女子プロレス小説ですが、ほとんど進んでません。汗

 現実の社会情勢が変わってきているため――例えば、AEWに新日が参戦するようになったり、日本人女子選手が英国のEVEなどに頻繁に参戦しています。トップ選手の国内外での選手の出入りが盛んになっています――書こうと思っていた内容も土台から変化して来ているためです。

 コロナ禍と同時に始まった無観客のチョコプロもまさかの市ヶ谷での有観客興行とかやっちゃってますし。

 まあ、観客の存在が演者や選手のメンタルに影響するエンタメ界隈が盛り返すのはいいことではあるのですが。

(その一方で選挙後の国内どうなるんだろうとか考えるといろいろ憂鬱だったりはしますが……)

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