第21話 「破廉恥…」
「ごめん。用ができたわ。」
「は?用事なんてなかっ…」
聞く前に俺は駆けだした。
陽菜に助けを求めろと言ったのは俺だ。そんな俺が助けなくてどうするんだ。
陽菜は昨日、部活があると言っていた。こんな時間にやっているとは思えないが、学校に行く。
「くっそ…頼む。俺が考えてる一番最悪なことにはならないでくれ…!」
学校に着いたが、部活をやっているわけもなく、どうしたものかと悩んでいるところに。
「どうしたんですか?そんなに息を上げて。」
学校には西園寺結衣さんがいた。…どうしたのと聞かれても…。
「陽菜さんがまた倒れたらしいから助けにきたんだけど…西園寺さん、陽菜さん見てない?」
「…そんな間柄でしたっけ?」
「いや、違うけど。」
「…陽菜さんはちょっと前に帰った気がします。」
「わかった!ありがとう!」
そう言って、行こうと思ったが。
「…西園寺さん。陽菜さんの家ってどっち?」
「…ですよね。」
「ですよねってなんだ。」
「さて、行きますよ。倒れたなら早めに行かないと!」
話を逸らされたが今は、そんな暇はない。
西園寺さんを追いかけていく。やがて、道端で倒れ込んでいる、陽菜さんを見つけた。
電話をかけてから何分経った…?
手元のスマホをみると、12分と表示があった。
…電話かけっぱなしじゃないか。
「西園寺さん!救急車呼んで!」
「えぇ!?救急車ですか!?」
「そう!」
俺はこっちをみる。普通は逆なのだろうけど、今はこっちの方がいい。
だって。きっと。
陽菜もあのウイルスに。
目に光を当てる。瞳孔は動いてる。死んでいるわけではない。
色も、ヒビもない。
じゃ、意識を失っているってことか…?
手首を触る。脈はちゃんとある。
俺が知っている限り、意識を失うと、暴走するか、症状がひどくなる。
目にヒビがない。体は透けてない。
じゃ、他に何が…?
「春希さん!救急車呼べました!」
「ありがとう。」
「わ、私は何をすればいいですか!」
「深呼吸して。」
「え?」
「深呼吸。西園寺さん、少し動揺してるから。」
そう言って、冷静さを取り戻させる。俺は陽菜の症状を見つけるしかないのだが。全くわからない。
これじゃ医者に病状を伝えられない。
「ふぅ。」
「落ち着いた?」
「はい。大丈夫です。」
そんな落ち着いた西園寺さんの次の一声が鶴の一声だった。
「…なんか…ここだけ花が多くないですか?」
言われてみると。
なんだかここだけいろんな花が。しかも茎がない。がくと花弁しかない。向きもバラバラだし、色々な種類がありすぎる。
じゃ、こいつの症状は…。
そう考えて、服を捲り上げた。
「わわわ…破廉恥…」
「ちょっと確認するだけだ。誤解になるようなこと言わないでくれ。」
そう言って、体を見るが。体から花は生えてはいない。
そんな、創作のようにはいかないか。
それを確認していると…
救急車が来た。
「こっちです!」
「では、どちらか片方ついてきてくれますか?」
「はい!…ありがとう、西園寺さん。この恩はいつか返す。」
そういうと、西園寺さんは、大丈夫ですよと、笑って返してくれた。
…何気に見た初めての笑顔だった。
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