第22話 《花吐病》

静かな病室。部屋には寝たままの陽菜と、俺。


病名、花吐病はなはきびょう。喉に幾つかの蕾があることを見つけて、口の中に花弁が残っていたこと。


また、倒れた付近にも、いろんな種類の花__しかもかなり硬い___が散乱していたことにより確定した。


ちなみにここの医者は、俺らと同じ出身である。


数十分後、陽菜は目を覚ました。


「ここは?」

「病院。」

「なんで?」

「お前は俺に助けを求めたから。」

「そうだった。…助けてくれてありがとう。」

「どーいたしまして。」


そんな会話を済ませたあと、早速聞きたいことを聞く。


「さて、症状だけど。いつからあったの?」

「二週間前。トイレで吐いた時、花がトイレで浮いていて何が起こったかわからなくて、そっから隠そうって決めたんだよね。」

「…ちょくちょく意識を失っていたのは?」

「激痛で意識を失っただけだね。花びらが喉を突き刺してきて。」


そこからは聞きたくはなかった。


そこで、看護師と医師が入ってきて。


「あなたは花吐病という、今まで誰もかかっていない病気にかかっています。」

「はぁ。」

「故に。特効薬ないし治療法がないのです。」

「…。」

「ですから…。」


そこで医者は少し躊躇いながらも、口に出した。


「あなたの体で研究をしたいのです。その病気を。勿論、体に変なことはしませんし、お金もなんなら出します。どうでしょう?」


そんなことを言うからびっくりした。


「ちょっと待ってもらってもいいですか。」


そんなことを言ったのは、扉の外にいた、秀斗。なんでいるのかわからない。


「…春希。わかってるか?」

「何が」

「こいつらの病気の治療法。」

「…いや、治ったのは見たことがないが…弱まるのは見たことがある。」

「それは…」


「「トラウマの克服」」


俺と、医者の二つの声がシンクロする。同じ出身地なのだから、わかる。


そう。良弥も少し過去を話すと色が薄くなったし。はるか昔。かなでも、色眼病の時、嫌なことを話すと楽になると言っていた。


「トラ…ウマ…。」

「そう。トラウマ。何か話せることある?」


そう言った時、陽菜の顔は歪んだ。


「あるけど…話したくない。無理。こんなん話すくらいならこれにかかってたほうが楽。」


と、言うと奴は怒りをあらわにした。


「おいっ、お前!?…」

「そっか」


秀斗がくってかかる前にそう言った。

そう。これは俺らの問題じゃなく、陽菜の問題なのだ。

俺らが関与することじゃない。


その後。病室を後に。

そして病室の外にいた季節組に一言。


「お前ら、お腹すいたろ?飯、食いに行かね?」


◆◇◆◇


「それで、あなたは研究に協力してくれますか?」

「…治せる確率が上がるんですよね?」

「はい。それは絶対です。」

「なら…協力します。私としても早く治したいので。」

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