第20話 「助けなきゃ」
そういえば、夏芽と凛しかいないが、秀斗はどこに行ったのだろう。
「さて。春希くん。」
急に夏芽に声をかけられる。
「なんで秀斗がいないかわかる?」
「いや、わからん。なんで?」
「この前あったんでしょ?」
「まぁあったにはあったけど…。」
「まぁ、百聞は一見に如かずだね。行くよ。」
そう言って、彼女らは警察署の方に歩き出した。
そして。警察署では、熱心に話す秀斗と警察の人がいた。
「それでこの地域はもう汚染されているんです!」
「汚染…か。何で汚染されているんだ?」
「未確認性のウイルスです。現在確認されている症状は、目にヒビが入り、目に色が入る、“色眼病”。体がだんだん透ける、“透化病”。この二つです。」
未確認性のウイルス。
「それで?汚染されているから、避難をした方がいいと?」
「はい。これ以上犠牲者を出す訳にも…」
それは。
「ちょっと待って下さい。」
「…何?春希。」
「避難はしないでください。というより…逃げたら、犠牲が増えるだけです。」
「は?どういうことだよ。」
「“雄呑町(ゆうのちょう)”って知ってますか?」
「あぁ。市町村合併で無くなった隣の県の町だろう?」
「そうです。そこで同じようなウイルス騒動があったことは?」
「…それは。」
「機密事項なんですよね。知ってますよ。だって、被害者ですし。俺。」
「被害者…!?」
「はい。だから、どこに逃げてもどこかできっとウイルスがばら撒かれます。」
「なんでそんなこと…」
「見たことあるんですよ。色眼病。この目で。」
「死んじゃったんですけどね、その子。」
俺が話している時、周りは何も動いていないかのような、時が止まっているような。そんな無音だった。
「…それで、そのウイルスの出たところですけど。医療先端技術研究所、だと思うんです。」
「…なんでそこだと?」
「ニュースでやってた、あそこの放火とウイルスの症例が出た時期が近いからです。」
「…。」
そして、その警察の人は呆れた顔をして。
「わかったわかった。調べてみる。お前らは帰ってくれ。」
そう言われて、半ば強制的に退出させられた。
「なぁ、春希。さっき話したことって本当…なのか?」
「そうだよ!あれ本当なの?」
「…。嘘じゃないと思うけどさ。」
それぞれ三者三様の反応。わかりやすい。
その問いに俺は。
「そう。全部本当だよ。」
としかいえなかった。
食事に行くのは本当だったらしく、今から食事に行くらしい。
…ご飯を食べるには絶望的な空気である。
なんでこいつらはああいう行動をしたのだろう。でも…中学の時と同じか。
「なぁ、秀斗。お前はさっきの話聞いてなんか思ったか?」
「…すまん。今はなんともいえないわ。色々ありすぎて頭がこんがらがりそうだ。」
そりゃそうだ。
こいつらがしたかったのはこの街の救出。だってのに、一人が過去の話をしただけで、計画は潰れたのに、いい方向に進みそうなんだ。
俺でもよくわからん。
「つまりさ。春希くんがウイルス知ってるのは、過去に同じことになったからなの?」
「そう。んで、危ないからこっちに引っ越してきたのに、またこんなことよ。」
「…?じゃ、あの子は…」
その時、俺のスマホがなった。
電話だ。相手は…、
陽菜?
ごめん、電話。と言い、電話に出る。
『どうし…』
『たすけて』
そして、電話から何も聞こえなくなった。
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