第18話 「ちょっと教えてくれない?」

今日は金曜。なんとそろそろテストが近いということで、放課後学習会という謎な時間が設けられた。


部活をしてる奴らは部活動の時間が減って、怒る奴や、嬉しがる奴がいるが。


帰宅部からすればそんな時間はいらない。さっさと帰らせてほしい。


そんなことを思いながら、無駄な時間の勉強をする。ちなみに成績は特にいいというわけでも悪いわけでもない。所謂、一般人である。


隣の席の詩織というと、綺麗な姿勢で、勉強をしていらっしゃる。あの詩織が、こんなに。


そして時間が終わり、帰ろうとした時。


「ねね、春希くんってさ、数学得意だったよね?」

「…まぁぼちぼちですけど。」

「ちょっとここ教えてくれない?」


と陽菜が聞いてきた。


バレないように詩織に目線でメッセージを送る。先に帰っておいてと。


まぁ、すぐに気づいた詩織は勿論すぐに帰っていた。


「…また詩織ちゃん見てる」

「…数学だっけ?」

「わお。全スルー。…そうですけど。」

「まぁ、いいよ。」

「お、いいの?じゃ、あっちの空き教室でやろ!」


というので、奥の空き教室にいく。というかバレるんですけど。もっと他に何か考えておかないとなぁ。


そして教室に着くや否や。

陽菜が勢いよく、扉を閉める。


「なんで君ってやつは!」


そういきなり叫ばれて少したじろいてしまう。


「この前、私が倒れた時あったでしょ?その時さ、君、どうやって私を保健室に運んだわけ?」

「…それは…お姫様抱っこ…で___」

「だよね!聞いたもん。廊下を女の子を抱えて全力疾走したって。」

「あぁ…どうもすみませんでした…本当に…。」

「本当に…そのあと誤解を解くの面倒臭かったんだから…」


珍しく怒っている陽菜。俺はなんで怒られているのかよくわかっていなかった。いや。どうでもよかったのだ。


だから。


「…ていうか、あの時、なんで急に倒れたりしたの?」

「…なんでだろう。それは私もわかんない。」


そんなことを言う陽菜。うーんと腕を組んで考える素振りをして、やがて。


「なんか急に視界が暗転したの。」


と言った。

それを聞いた途端、俺はこの前の良弥を思い出し、陽菜の目を見た。


彼女の目は。


いつも通りの綺麗な黒。


「な、何?なんかあった?そんなに見て。」

「いや、なんでもない。…急に視界が暗転、か。なぁ、次そんなことがあったら、ちゃんと助けを求めるんだぞ。危ないんだから」

「え、あ、うん。わかった。」

「よし、じゃ、やるか?」

「うん。」


そうして俺は数学を教えた。

にしても、同じ症状兆候か。…いや。まさかな。

まさか、そんなことはないよな?

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