第17話 《色眼病》
次の日。
学校では俺と詩織との噂は流れていなかった。
何かをしたわけではない。…まぁただ…
「えへぇ、は、春希さぁん、ど、どういう要件で?こんな朝早くから。」
「いや、なに、君は昨日は何にも見ていないよ、と伝えにきただけさ。」
「だったら…その拳…下げてもらっていいっすか…?」
「じゃ、お前、一切昨日のこと口外しないと契約しろ。」
「します!しますから⁉︎」
「言ったな?破ったら…。…切り落とすからな。」
「っひ!」
とこんなふうに、実に対等な取引で話を呑んでくれた。
学校が終わり、夕暮れ時、俺は昨日のあいつと会っていた。
そう。良弥だ。
病院の院長もなんの病気かわからないと言っていた。
目は赤く腫れ上がり…目玉に亀裂が入ったように見える。
そう。そこに色が入り込み…色とりどりな目を持つ。
これを俺は
俺が見たことあるのはこれで3回目だ。
そして…。発症時を見たのは2回目だ。
そんなことを考えていると、良弥が起き上がる。色眼病の激しい痛みは色付くときだけである。
「…俺は何をしていたんだ?」
「…お前は正体不明な病気にかかったんだよ。」
「…?」
鏡を見るように促すと、
「は?」
と素っ頓狂な声が病室に響いた。
だってそうだ。目がひび割れたような模様をしていて、色がつき始めているのだ。
「な…なんだよこれ!?おい?!お前!?何か知らないのか!?」
「落ち着け。」
そう言って俺はそいつを座らせる。
「俺はお前に聞きたいことがある。」
「…な、なんだ?」
「まずは…お前に何があった?」
「何がって…俺は普通に過ごしてただけだ。だってのに、俺の意思とは違う行動をしたりしたんだ。」
「…お前はあの時何かおかしなことがあったか?」
「あったぞ。急に視界が無くなったように目の前が真っ暗になったんだ。」
「なるほどな。…じゃあ、お前に“トラウマ”はあるか?」
「トラ…ウマ…?」
「あぁ。過去に何かがあったとか。」
「…あるといえばある。」
「…サクッとでいい。説明してくれ。」
そうして良弥は話し始めた。
良弥にはとある先輩がいたらしい。その先輩は同じバスケ部でかっこよくて、憧れだった。でも、あるとき、彼女と別れたそうな。その時、その先輩はとある行動に出たのだ。それは彼女のいた良弥を複数人でフルボッコ。勿論、殴ったのは金を払われた取り巻きで、その先輩は暴行をしていない。そして、バスケで期待されていた先輩だから、後輩が半殺しになっても顧問、監督は見て見ぬふり。そして良弥は全治半年の怪我を負ったそうな。
そんなことがあったのに、なぜ凛にはあんなことをしたのか。それはまだ聞けそうになかった。
が、彼の目の色は少し薄れた。
このウイルスは、心の重さが病気の重さに比例する。が、以前より、かなり酷いのを見ると、ウイルスとしての完成度が上がったか、病状が重くなったかのどっちかだな。
いや、もう病状が重いとかの話じゃないな。だって、俺の意思とは違う行動をしただぞ?
もう寄生と呼べるんじゃないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます