第16話 「消えろ」
「ただいまー」
夕食の買い物を済ませて、家に帰ってきた。玄関には知らない靴があった。
でも、その靴は片方見覚えが微かにある。家から聞こえてくる声は楽しそうだ。
キッチンに移動すると、冬稀凛とその妹さん、
「ごめんね。急に買い物してきてもらって。」
「いや、いいよ。食事は人数が多い方が楽しいしな。」
「おにーさん!今日のご飯なーに?」
鈴は俺のことをおにーさん呼びで定着している。
「今日は〜鍋にしようかなと。」
「お鍋!お鍋!」
こんなことを言ってテンションが上がっているが、中2である。…本当に13歳か?
そして、鍋を四人で囲んで摘んでいく。
食事がある程度済んだ時。
「春希くん。来週の週末さ、季節組で食事したいなと思ってるんですけど。来週の週末空いてる?」
「あぁ、空いてる…な。うん。」
「季節組?」
と、詩織が言う。
「あぁ、中学の時のよく連んでた奴らだ。みんなそれぞれ季節の漢字があったから、季節組って名付けただけだ。」
「えっと…佐野春希くん、
と、鈴が言うから、びっくりしてしまった。
「お、覚えてんのか…。凛が教えたのか?」
「いや、なんか色々話してたらみんなのこと覚えてたの。」
こんな小さなやつ扱いしてるが13歳である。
「そういえば帰るのか?こっちに泊まるのか?」
「どうしようか。こんな夜中に外に出ると変なやつとかに絡まれたりしないかなぁ。」
まぁ、襲われる可能性はゼロじゃないか。
「送っていくのは?」
と詩織が提案する。
「そんじゃそうするか。」
そして、俺らは夏の夜に。
なんとなく涼しく、過ごしやすい環境のような感じがする。
冬稀家までは一キロぐらいなのでそんなに遠いわけではない。
なので夜空を楽しみながら歩く。
昔の星つなぎを思い出しながら。
そしてとある公園を通りかかった時。
あいつがいた。そう。凛の元カレ。良弥。
あの後、良弥はどっかにいったのかと思っていたのだが。まだ諦めてなかったのか?
そう思い。
「おい。こんなとこで何やってんだ?」
声をかけた。
「…あぁ…あ…?」
その目は男の目ではなかった。何かに破壊された…ような…。
この目は。いつぞや見た気がするんだ。あの引っ越す前のあの時。
「たす…たすけ…!」
そう。目に色が入り込み、最終的に目が破裂する…所謂奇病。
でも…。
いや。ここで俺の頭の中で点と点が結べた。
過去、俺の住んでた地域でおきたウイルス騒動と、今回のウイルス拡散の事件の使われたウイルスは一緒。つまり。
犯人は…。
「あぁぁぁぁっぁ!!」
そいつは絶叫を口にする。そして俺に向かって襲ってくる。
でもその前に。そいつは拳にぶつかり、吹っ飛んでいった。
「大丈夫かい?春希。」
「あぁ、大丈夫だよ。秀斗。」
秋山秀斗がそいつを突き飛ばした。
「お前なんでこっちにいんの?」
「なに、少し食事する前に顔でも見にこようかと思ったんだが…。こいつ誰なん?」
「あぁ、凛の元カレのクズだね。」
「あぁ。あいつか。とりまこいつは俺が警察持ってくからさ。お前はあいつら送ってくんだろ?」
相変わらず一瞬で物事を理解するやつだ。
「…おう。ありがとな。」
「来週楽しく飲もうぜ!」
「まだ酒は飲めねぇよ。」
「はっはっはっ!そういえばそうだったな!」
そう掛け合い、女子らの元に戻る。
「悪りぃ。遅くなった。」
「…なんかやばそうだったけど。」
「…まぁヤバいにはやばかったんだが。さっさといかねぇとな。また変なやつに絡まれちまうからな。」
そう言い、俺はそいつらの背中を押していく。
無事、冬稀姉妹を家まで連れて行けて、俺らも帰ることに。
「そういえばさっきこの公園で何があったの?」
「あぁ…良弥…まぁあの凛のクズ元カレがいて。」
「あぁあいつ…」
「そいつの目、
「…え?ってことは…」
「そうだ。…あの時の…」
その時…。
「おや。おやおやおやおや。何をしてるんですかね?」
めんどくせぇやつに遭遇した。
「
「佐野春希さんと?沖田詩織さんが?こんな夜の9時半ごろに?二人っきりで歩いているなんて?ナニしたんですかねー!?」
だるい。それに尽きるのだが。こんな生き生きしている彼を見るのはだいぶ久しぶりだ。
「何勘違いしてんだ。女の子をこんな夜に歩かせるのは危ないからこうやって護衛をしてるんだろうが。」
俺はすぐさま適当に理由をつける。
「へぇー。詩織さんはなんでこいつなんかと?」
そこで詩織は舌打ちをし、板倉を睨みつけた。俺はそこでフォローをする。
「お前みたいなチンピラみたいなやつとは関わりたくないんだよ。もうどっか行けよ。お前がいるとこっちまで嫌われるわ。」
「いやいや。これはしつこいくらい粘着しないと___。」
と言いかけた時。
「…消えろ。さもないと…。」
と、詩織は言ったのだが。少しの沈黙があり、そうして俺に視線を向ける。え、そこで俺に振る?
「き、切り落とすって。」
そう言うと、板倉の顔は青白くなって行き、すみませんでしたぁー!って逃げていった。
「…いや、あそこで俺に振るんかい。」
「だ、だって思いつかなかったし。」
まぁいいか。めんどいことにならなきゃいいし。
あいつが変に広めるのが唯一懸念点だがな…。
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