第12話 「放火の犯人は私だ」

「あ、白秦先生、李乃先輩は?」

「あ、問題児なら、今日は部活来れないって。」


問題児呼ばわりである。

今日は問題児もとい、李乃先輩がいないので、幽霊部員が大幅復帰。一昨日は二人しかいなかったのに。


「あぁ。そうだ、問題児からお前宛の手紙をもらっていてな。」

「手紙?」

「あぁ、どうしてもあいつにだけは知らせておきたいことがあるって言っててな。…っていうか、お前らいつから文通する中になったんだ?」

「…恋仲なんてなってないですよ?っていうか、文通しただけでそう思うのは良くないですよ。先生じゃないんだから…」

「おい、なんで知ってる…!」


そりゃ、職員室に行った時に机に手紙の書きかけがあったからである。あんなにハートあったらそうなるだろう。


「はぁ。手紙は家で書いた方がいいか…。」

「そうしてください。」

「…ほら、これが手紙だ。中は見てない。」


どういう意味だ。別に中見たって変なことはないのに。


そんで手紙を開けて読み始める。


「ちょ、ここで読むのか?」

「別にいいでしょう。変なことなんて書いてないですよ」


春希へなんて本人の口から聞いたこともない言葉から手紙は始まった。


『大層、今朝は話しかったらしいな。まさかお前から電話してくるなんて思わなかったぞ。まぁ。』

「…それ、本当にここで読んでいいのか?」

「ただ、聞きたいこと聞いただけなのになぁ。」

『すぐに、本題に入るか。まぁ、お前にはあんまし関係ないけどな。私、部活辞めるわ。』

「はぁ!?」

と大きな声をあげてしまう。すると周りの部員がこっちをみる。

「すいません、大丈夫です。実験の方続けてください…」

大恥かいた…。

『結局、そうだったんだ。私がいるから部員がいないんだったやっとわかったんだ。だから、秦にもよろしく言っといてくれ。』

『ていうか、手紙を渡したなら、言っとけって話だよな。まぁ、そこら辺は頼んだ。私はお前のこと以外に信頼してんだからな?だから…』

『やっぱ、媚薬は持っててくれ。』

『連帯責任としてな?』

p.s.次の部長はお前だと私は思ってるぞ。


そんな。手紙だった。


ちょっと泣きそうになった。


俺は先輩とのこの部活は楽しいと思っていたのかもしれない。ありがとう。二ヶ月お世話になりました。

でも、媚薬なんて使わないんだけど…。まぁ、いいか。

やることやって、帰る。


あぁ、今日は買い物をするんだった。


「あ。」

「あ、昨日ぶりで。」

「戻ったんだね。」

「まぁ。よかったよ。そっちは?あれからなんもない?」

「うん。あいつの連絡先は消したし、変えれるものは全部変えといたよ。」


まじか。やっぱ、怒らせるとこうなるんだ。凛は怖い。


「ただいまー。」

「おかえりー。」


買い物袋を持って、帰ってくる。


詩織はニュースを見ながら、飲み物を飲んでいる。


「あのさ、朝のニュースの火事のやつなんだけど。」

「ん?なんかあったの?あの火事?」

「あの火事、放火なんだって。」

「え?放火?」

「そうそう。あ、今やってるよ。」


そうせかされ、椅子に座るまでもなく、机に手を置いて、テレビをみる。


『先程、上本町の医療先端技術研究所の放火の事件ですが、犯人が捕まったそうです。』


へぇ。そう思い、冷蔵庫の中を整理しようとする。


『その犯人は、現在18歳の神無月 李乃容疑者です。先程、警察署の方に、“放火の犯人は私だ”と、自首してきたということです。』


…え?


こんな日でも、一番星は輝いていた。


その後。


『医療先端技術研究所から、未確認のウイルスが多数確認されました。上本町、あるいは、近くの住民はマスクを必ずして、外出をしてください。』


なんてなるのは、もうちょっと先のお話である。

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