第10話 「佐野、春です」

服を一通り買った後、ランチということで、カフェにやってきていた。


そこで、頼んだものが来たのはいいのだが…。


「あれ?詩織さん?」


その声の主は。


「え?誰ですか…?」

「あぁ、私、副生徒会長の西園寺さいおんじ 結衣ゆいと、申します。ところでそちらのお二方は、ご存知ないですけど…。もしかして、転校前の学校のお友達?」


これはやばい。万が一バレたら、俺の学校生活は脅かされることに…。


「はい。なんか転校祝いだーって来てくれて。」


ナイスだ詩織。


「ふふ。仲がいいのですね。お二方、お名前は?」

「冬稀、凛です。」


…どうするどうするどうする!?!?


凛が自己紹介したということは俺もしなきゃいけないが、今の俺は俺であって俺じゃない。しかもここで本名を言って万が一バレたら、学校での平穏な生活が保障できない!?しかも、本名を言わなかったとして、どんな名前を言えばいい?!そんなの考えていない!?どうすればいい!?


テンパっている間約0.05秒。結局言ったのは。


「…佐野、春です。」


「うんうん♪二人とも可愛い名前だ。」


そこで店長から結衣さんは呼ばれて裏に引っ込んでいった。


「いった?」

「うん、いったいった。」

「てか、春ちゃんかー。」

「何?いいでしょ?」

「まぁ、テンパってたしねー。あんまセンスはないけどね。」

「センスない…?この名前が…?」

「というか、わかりやすくない?」

「…まじ?」


ここで恥を晒したが、ここだけで済むならまだ安い方だ。


そして、ランチを食べ終わり、外に出て、帰路に着く。凛さんを家に届けて、俺らの家に帰る。


「いや、本当に何が起こるかわかんないね。」

「そんなこと言う割に楽しそうだな。」

「そりゃそうでしょ。だって、苦労してんの私じゃないしね。」

「くっそー、なんかこいつにもおこんねぇかな。」

「何も起きないでしょ、“はるちゃん”?」

「…やだ。その名前はやだなぁ。」


家に帰る。こういう日が続くのが幸せで、楽しいことなのだろうか。


時間帯はほぼ夜である。


「俺らはこんなに星に近づいた。」

「…あぁ、昔の夢だっけ。星を掴むくらい大きくなってやるって言ってたね。なれた?」

「…なれてない。ていうか、まだ170いかないしな。」

「いいんじゃない?女の子の体としてはちょっと大きいぐらいだし。」

「…今、夢の話するんじゃなかったなぁ。」

「なんで?今も昔も変わってないんだしいいんじゃないの?」

「変わってないって…」

「…身長のことじゃないよ?昔、一緒によく星見てたでしょ。“はるくん”」

「…そうだったなぁ。」


久しぶりに思い出す。あんなに光っていた夜の星たち。


綺麗で引き込まれそうな夜景。


「…それでしかも、私たちの星座を作るんだって、星を繋げて星座を作って遊んだっけ。」

「あぁ、あれか。三角定規座。」

「…覚えてるんだ。…あ、あれが…バイオリン座だったっけ。」

「以外に覚えているんだな。」

「まぁ、こんな星座ないんだけどね。」

「俺らが作った俺らだけの星座だしな。」


そんな、思い出話を語る。


そして時間はとんで、次の日の早朝。体の変化で起きた俺は、自分の体を触ってみる。すると、無事男の体に変わっていた。


なんでなのか、よく考えてみる。俺は性転換したあの日何をしていた?


部活行って、媚薬作って、媚薬持ち帰って、サイダーに入れて、サイダーで、男撃退して、凛助けて、部屋に閉じ込められて、サイダー飲んで寝たなぁ。


ん?まてよ。サイダーに何入れたって?そりゃ、媚薬…


…絶対原因それやん…!


なんでか知らないが、媚薬入りのサイダーを飲んで俺が女の体になったんだ。絶対原因はそれだ。


バックから媚薬を取り出す。


成分なんか書いていなかったが、製造と連絡先はあった。


製造は…STAR connect?

よくわかんないため、連絡先をみる。電話番号だ。すぐさまその電話番号にかける。


電話にかけて出たのは、神無月 李乃先輩だった。

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