第8話 「誰ですか」

次の日。私は春希くんの家の布団で目を覚ましました。


あの春希くんとお父さんしかいない家に女の子がいることがびっくりしましたが、理由を聞いて納得はしました。

…春希くんのお父さんは責任感があまりないです。まぁ私の彼氏だった人に比べればまだあると思うんですが。


今日は祝日です。なので私の通っている学校も春希くんたちが通っている学校も休みのはずです。


私は外に出るのは怖いので、リビングで二人とも起きてくるのを待ってから、朝食でも食べて、その後でも一緒に家に帰ろうかなと考えていると。


昨日、春希くんが制裁を受けて閉じ込められた部屋が開いて、春希くんが出てき…


「…誰ですか?」と言った。絶句した。


朝。起きて、扉を開けて、目の前にいた凛に言われたのはそんな一言だった。


「誰って…春希です。」

「…嘘だ。春希くんは男の子だったはずだもん。」

「そりゃ、男だけど…」


そう言って、目線を下げて、自分の掌を見る。あれ?自分が気になったのは、掌よりも手前。胸の辺り。なんか膨らんで…、あれ?


自分でもよくわからなくなってきた。


「落ち着きましたか?」


そう言われ、二人の女の子に見守られながら、水を飲む。


「さて、じゃ質問するね。名前は?」

「佐野、春希…。」

「年齢は?」

「15です…」

「性別は?」

「男です…今は説得力ないけど。」


そう、問答をされていた。もちろん、俺も女体化しているなんて思いたくもない。


「んー。まぁ、別人に変わったとかでは無さそうかな。」

「じゃ一番ありそうなのは、性転換?」

「そうなるかな。信じたくはないけどね。ねぇ、はるくん。」


そう呼ばれ、少し気負いしてしまう。


「…は、はい。なんでしょぅ…」

「女の子の体になったからって変なことしないでね?そういうのマジで気持ちわるいから。」

「うっす…ぜってぇしません…ていうかしたくないです…」


正直、全く触りたい気持ちなんてない。てか早く元の姿に帰りたい。いつもと違う感覚はなんとなくソワソワする。


「んで、お前が春希だとして、明日の学校はどうすんの?」

「あ。」


今日は祝日。明日は普通に学校がありやがる。授業を受けるにもこんな姿じゃ受けられる気がしない。


「転校生として、入るとか。」

「まぁ、それが一番か。そうするしかないもんな。男のお前が急に女の子になって席にいるのはおかしいもんな。」

「女装癖はありだと思うけどね。」


と、いきなり発言する凛。


俺にそんなキッツイキャラを演じろとでもいうのか。


「まぁ、どちらにせよ、女の子用の服は必要なんだし、買いに行かなきゃいけないから。準備して。凛もいい?」

「うん。今日はあんまり一人で行動したくないから。」


今日の詩織はなんか他人行儀だ。まぁ、こんなことあったんだから当然だが。


そういうや否や、家のチャイムが鳴った。


「こんな朝早くに誰だよ…?」


そんで、対応しようとカメラの映像を見ようとした。

すると。


「すんませーん、うちの彼女いるんですよねー?開けてくれますー?彼女返してくださいー?」


と、昨日、俺が蹴っ飛ばしたやつと二人、取り巻きみたいな奴らが、柄悪く立っていた。

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