第6話 「やめてください!」

どうすべきか。それだけを考えていた。媚薬とかいう激ヤバ先輩の激ヤバ薬物を持ってきてしまったが。これをどうするべきか。


まぁ、使わずに明日返せばいいのだが、ここで、下心が出てしまう。


“あの激ヤバ先輩に飲ませてやろう”と。


約二ヶ月あいつの相手をしていたのだ。少しくらい何かを仕返ししてやろうと考えるのが自然的で必然的だろう。


ということで、飲み物に混ぜるのが一番簡単だと思ったので、近くの自販機からサイダーを買う。一応試しをしておかなければ。


ちなみにあの先輩はサイダーが大のつくほど好物である。


なのでサイダーを選んだわけである。そしてそのサイダーの中に媚薬を入れた。


よしよし。これを先輩に飲ませれば。


と、ここで気づいた。飲ませてどうするんだ?

別に俺は先輩を襲いたい気持ちなんてこれっぽっちもない。というか、お断りする勢いだ。やっぱりすぐ返した方がいいか…。とそう思った時。


「嫌だっ…!やめてください!」


と、公園から聞こえてきた。通常なら、何にもなかったかのようにスルーするのだが。


「うるせぇなぁ‼︎りん‼︎お前は言うこと聞いていればいいんだよ‼︎」


そう聞こえてきたのだ。昨日のあのいちゃつきはどこへやら。


それを聞いた刹那。体はもう動いていた。脳が理解する前に。


「なんだよぉお前⁉︎関係ないやつは引っ込んでろ‼︎」

「関係なくても、女性に手をあげる男はどうかしていると思うのですが。」

「俺がどうかしてることと、お前が邪魔することと何が関係してんだよ‼︎」


ぱちんと、頬に電撃が走り、叩かれたことに一瞬理解できなかった。


なんでこいつにビンタされなきゃいけないんだ?


そう思ったのと同時に憎しみが、憎悪が自分の中で巻き起こってきた。


「おーい!?邪魔だって言ってんだろーが?聞こえねーのかよ?」


こいつを許さない。許してはいけない。


「早く動けよー?!邪魔だって言ったろ?俺はもう限界なんだっ」


言い切る前にペットボトルのキャップを思いっきし顔にぶつける。


「いて、なにすん」


手で押さえていたサイダーを振り、中身を顔にぶちまける。


「あ“あ“あ“ぁぁぁ‼︎‼︎」


絶叫している所に裏拳で顔を叩く。そんでもって鳩尾みぞおちに蹴りを入れる。


男は無事、茂みに吹っ飛ぶ。


そんでそこにいた、冬稀とうき りんの手を掴む。

こいつがこの前店で見た中学の女友達だ。彼氏といたが、こんなクズと付き合ってたなんて…。


「逃げるよ‼︎」

「え?ちょっ…」


そして、自分の家の前まで走ってきてしまった。


「大丈夫?急に走っちゃったけど…。」

「はぁはぁ…うん…だいっ…じょうぶ…。」


凛は息が切れて、呼吸が不安定な気がする。

背中をさすり、ゆっくりと呼吸をすることを促す。


そして、数分後。


「もう大丈夫だよ。ありがとう。」

「そう、それで?さっきのやつはなに?」


と、聞きたいことを問いただす。


「それは…」


と、言い籠る。


「あぁ、ごめん言いたくないならいいんだけど…。」


と、すぐさま謝る。誰だって言いたくないことの一つや二つあるのだ。


「…ぶ…です。」

「…え?」

「…大丈夫です。」

「それは…言えるってこと?」


こくこくと頷く凛。


「…あれは…」


と言うのと同時に。


がちゃりと。

「おかえりー、はる…くん…」


そう、顔だけ見える彼女の顔が何が起こっているかわからないという顔なのは言うまでもなかった。


でも、俺のことを睨んでいることはすごーくわかった。

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