第4話 「人気者だなぁ」
朝。それは一日の始まりの大事な時間であり、その日の気分が決まるという重要な時である。
ってのに。俺らは本当に間に合わない遅刻をかましていた。
そりゃそうだ。眠りについたのなんて日が跨いだ後だ。いや、夜明けの方が近かった気がする。
いや、学校を休むという選択肢はあった。が、焦りすぎてそんな策を思いついたのは学校についてからである。
よくわからん遅刻提示票を適当に書き、教室に入る。幸い、授業中ではないので変な空気にならずに済んだ。
「今日はどうしたん?」
そう隣の席の陽菜が聞いてくる。
「いや、単純に寝坊だわ。それ以上でも以下でもない。」
「あー…不運だったってこと?」
「そういうこと。」
そこで同じく遅刻してきた、詩織が教室に入ってくる。すると周りに女子が集まる集まる。
「人気者だなぁ。」
「なーに?嫉妬?」
「いや?そんなんじゃないよ。同じ遅刻なのに、これだけ扱いが違うんだなって。」
「まぁ、それは…日頃の行いでしょ。」
そう片付けられてしまった。
ちなみに、同棲していることは学校の奴らにはわからないように行動しようとお互い同意している。というか俺がやりたかっただけだが。だって、こんなことないじゃん。やりたいじゃんそういうことさ!
そして、時は放課後に移る。
俺はとある先生の前に立たされていた。
「で、だ。君はいつ頃部活に来てくれるんだい?」
「いやー…ちょっとまだ…。」
「そうやってまた伸ばすのか。いい加減私一人であの生徒を止めるのは少々手間がかかるというか…な?わかるだろ言いたいこと。」
「わかりますけど。じゃぁ明日行きますよ。今日は予定入ってるんで。」
「そうか。では明日。絶対に来るんだぞ。」
「はーい。」
やっと先生から解放された。でも、明日の約束を取り付けてしまった。
そして、もう一つ面白いこともわかった。まぁ、使えるかといえばわかんないけど。
「めんどいなぁ…」
なんてぼやいた。
帰りながら、詩織に買い物をすべきか聞く。まぁ、目の前に詩織がいるわけではない。携帯電話とはなんて便利なんだろうか。
『お願い。』と、買ってきて欲しいものが紙に書いてある写真が送られてきた。そんな返信が返ってきた。
『了解』と返しておく。
そんなこんなで買い物中、中学時代の女の友人を見かけた。まぁ、流石に話しかけはしなかった。彼氏がいたしな。
「今日は何食べたいの?」
「今日は…肉じゃがかな?」
「肉じゃがねぇ。いいけど、私煮込み系は苦手よ?」
「いいの。食べたいから。」
なんとも幸せそうなカップルである。俺らはあんな恋とかできんのかな?
用も済んで、帰ってきた。
「ただいまー」
と言いながら扉を開ける。
この部屋に男だけで何年も住んでたからか、家の中に女の子がいるだけで空気が清々しく感じる。いや、むしろ甘い気さえする。
夜ご飯を作っている時。詩織は横で作っている様子をずっと見ていた。
「何かしたいの?」
と聞くと、
「見てたいだけ。」
と返された。
今日の夜ご飯を食べた詩織の笑顔はより一層可愛かった。昔と変わらず。
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