王族日記
御影イズミ
いろんな事がありすぎた
「……お」
世界と世界をつなぐ世界、ガルムレイに存在するアンダスト国・領主官邸の自室で掃除をしていたイズミは何やら久しぶりに見たな、という表情を浮かべてそれを取り出す。
ベッドの下に潜り込んでいた革の日記帳。日付は今より2年前となっており、丁度アルムが自分の父親を探すために旅に出る事になった頃の日記であることがわかった。
その旅には自分も一緒に出向いていたが、まあ色々とあったな、と小さく笑うイズミ。国王である伯父を探しに手伝いに行ったはずなのに、まさかあんな事件に巻き込まれるとは思わなかったと彼は呟きながら、日記帳を開いてみた。
前半は特に何もなく、城下町の人々との思い出だったり、姉から受けた仕事で起こった出来事だったり、解決策の難しい出来事の解決方法をメモしていたりと懐かしむほどではなかった。なので、彼はぱらぱらと彼女であるアルムの誕生日に書いた日記から読み始める。
8月27日 アルムと姉貴の誕生日
今日はアルムの誕生日だ。本当はプレゼントを持っていきたいところだが、姉貴の守護騎士である俺は国から離れられず、姉貴の誕生日を祝うしか出来ないのがなんとも歯がゆい。
というか姉貴、今日唐揚げ何パック食う気なんだろう。この日記を書いてる時点で既に3パックは食べてるような気がするんだが……。
とか言ってたらまた追加で買ってきてと言われた。マジで、なんで太らねえのアレで。俺に隠れて運動してるとしか思えん。
8月28日
リアルドさんが行方不明の話が出てきた。
というのも、向こうからの連絡がないと親父から通達が来た。
何があったんだろう。姉貴と俺で出向くことになったので、支度をすることになった。
8月29日
アルムが今日、成人の儀を受けたそうだ。
本当なら俺が見届人やるはずだったのになー……。
アルの奴、誰を見届人にしたんだろ……。
8月30日
兄貴が見届人をやったそうだ。嘘だろ。なんで。
「あー……そうだ、アルムの見届人が出来なくてこれ以降の日付は兄貴に愚痴ってるんだった……」
ぱたん、と日記帳を閉じたイズミ。自分ができなかった見届人を兄であるイサムが請け負ったことを知ったその日から、ずっと兄への愚痴を書いていたようで、かなりの日数に渡って愚痴が連ねられている。
一部、船に乗っていた故に文字が文字になっていない箇所もあったが……大半は愚痴だらけの日記。その日に起こった出来事を細かに書き記すだけでなく、要点や重要情報を書き記すこともあるが、彼にとっての日記はその日の出来事よりもその日に受けたいろいろな感情を書き記すためのものだ。
故に、久しぶりに読むと『なんだこれ』の感想以外が出てこないし、こんな感情が出てたことにも驚くという感想が出てくるらしい。特に今回見つけた日記は、当時の自分が如何に見届人が出来なくて悔しかったのかがわかる。
「これいつまでの日記だったかな……最近日記書いてねぇし、また新しく買って書かねぇとなぁ……」
ふう、と軽く息を吐いたイズミは日記帳を棚に戻し、再び掃除を始める。今日はアルムが来るので、綺麗にしないと怒られる気がするとは彼の言葉。
その後、アルムと共に当時の思い出を振り返るために日記を開き……兄への恨み言を吐いている日記を見られてドン引きされたのは、言うまでもなかった。
王族日記 御影イズミ @mikageizumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます